「黙れ!悪霊風情がふざけたこと抜かしやがって…!俺のご主人様は敏明様だけだ!」
咄嗟に距離を取り、もしもの時のために懐へ忍ばせておいた護符を構える。
俺の肉体を奪った悪霊がいきなりやって来たのには面食らったが、むしろ好都合かもしれない。
ここでこいつを祓ってしまえば、俺は無事元の肉体を取り戻すことができる。
そうなればご主人様がこれ以上私のために苦労することは無くなるし、もしかしたら褒めて下さるかもしれない。それどころかご褒美に抱いてくれるなんてことも…♥
「ククッ…」
「何が可笑しい?」
「なに、あの恐ろしい退魔師が随分と無様な姿になってしまったと思ってな。もはや自分の異常にも気づけていないのだろう?」
「…動揺させるための話術か何かなんだろうが、俺には通じないぞ。先刻は動揺した隙を突かれたが、もう油断も驕りも無い。今はただご主人様のためにお前を祓うだけだ」
俺がこいつに肉体を奪われてしまったそもそもの理由は、民間人のカラダを人質に取られてその隙を突かれたからだった。
だが、今この場には俺とこの悪霊しかいない。こいつと俺との本来の実力差を考えれば、邪魔が無いこの状況であれば間違いなく祓えるだろう。
『ご褒美』への期待で高鳴る胸を落ち着けて、余裕な笑みを浮かべている俺の肉体に向けて護符を放った…が
「どうした?俺が、退魔師の清彦が結界を使ったことがそんなに不思議か?」
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