俺が授かった『能力』は、相手が「替わってほしい」と思っている何かごと身体を交換してしまうというものだった。
宇宙人から聞いた説明によれば交換対象はなんでも良いらしく、金銭や物なんかはもちろんのこと、その人が持つ立場やコンプレックスなんていう概念的なものまで対象にできるらしい。
さらにはほんの少しでも「替わってほしい」という気持ちがあればいいとのことで、今回のように「少しだけ面倒」程度の気持ちですらその対象に含まれてしまうのだ。
「いやあ、こちらこそ素敵な身体を譲ってもらって感謝しかないよ。君はよかったの?俺なんかの身体を押し付けられちゃって」
「うーん……欲を言えばもう少しかっこいい男性がよかったですけど、仕事を替わってもらっている以上文句は言えませんよ。私の身体、大事に使ってくださいね」
他人と身体が入れ替わってしまうなんてありえない現象を前にしても、双葉ちゃんは当然のようにそう言ってのけている。
こうして身体の交換を当然と思い込んでくれるのも、俺が与えられた『能力』の効果だった。
交換相手はどんな身体を与えられたとしても文句は言わず、それどころか「替わってほしい」ことを交換した俺に感謝の念すら抱くようになるとのことだ。
「それじゃあ私は、えーっと……ああ、もうすぐ会議があるんですね。 では、これで失礼します」
「そういえばそうだったな。俺の代わりに頑張ってね、双葉ちゃん」
「やだなあ、双葉はもうそっちなんですよ? そちらも私の代わりによろしくお願いしますね、双葉さん」
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