実際にこの少年は今、リリアンという女悪魔との契約によりその眷属になろうとしていた。
少年のすぐ傍らに浮き上がる女悪魔は不気味な笑みを口元にたたえ微かに聞こえる程度の声音で謎めいた詠唱を続けている。
敏明の敏明の足元には赤色の光を放つ魔法陣が描かれ、そこに召喚された無数の黒蛇たちが彼に向って鎌首をもたげている。
黒蛇には口も目も存在せずその姿は長尺のおたまじゃくしを連想させた。
蛇たちは敏明の白い素足に巻き付くようにしてその身体を登りだした。
敏明はおぞましさに悲鳴をあげ蛇を払おうと躍起になったが、蛇は触れた瞬間に黒い煙となり霧散し、またすぐに元のよう戻るだけだった。
蛇はその白肌を覆うようにして身体にぎりぎりと巻き付きはじめた。
「ううっ」
敏明は蛇の肌触りの不快感に顔を歪め呻く。
やがてとりついた蛇たちはそのかたちをタール状に溶かし始めた。
薄く広がり肌に張り付いていく。
素足に取り付いた蛇は美しいロングブーツへと姿を変えた。
それは太ももまである黒光りするロングブーツで、ヒールの高さは敏明に極端なつま先立ち姿勢を強いるものだった。
彼はその慣れない姿勢に大きく上体を泳がせたが、まるでブーツが床に張り付いたように彼が倒れることはない。
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