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> ルート決定
#A:レジスタンスの為に動く
#B:自分のため動く
> 能力解説
#『変化』-Variation-
#様々なものを変化させられる能力。
#清彦は「奪った能力を自分のものとして変化させる能力」ものだと思ってる。
#『独立』-Independence-
#様々なものを独立し動かせる能力。
#清彦は「自分の体の一部を動かせる能力」だと思ってる。
#略奪-Plunder-
#様々なものを略奪、自分のものにする能力。
#清彦は「相手の所有物(能力含む)を略奪する能力」だと思ってる。
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#B:自分のため動く
最初はレジスタンスの為に動こうと行動していたのだが、「脳を独立し動かして、能力者の女性の体を奪う。あわよくば能力を略奪し戦力を増強させること」を目的としている事もあり、先ずは支配階級の情報を手に入れる事が優先だ。レジスタンスの味方になるのも良いが"俺がタチーハ=アルジェ・西東"ではないと感づかれることだけは避けなければならない。まずは自分の安全を優先だ、味方をなるべく一人か二人は作りたいのだから。最初は自分の為に動くが、心に余裕があればレジスタンスに手を貸す。中立と言った感じになるが、先ずは自分の為に行動をするとしよう。
本当は今すぐにでも、女の体を楽しみたいところだが。今回は我慢だ、先ずは情報を優先として幾つか状況を整理することが重要なのだから。
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まずはこの肉体の能力を奪っておこう。
「略奪-Plunder-、発動」
俺は自分の能力を発動させると、タチーハの所有する能力を奪う。
……なるほど、タチーハの能力は『霊感』-Inspiration-か。認識した状況から、あらゆるものを即座に理解する能力。これは奪っていく能力を理解する為にも、ありがたいな。
一つしか能力がなかったのは残念だが、そのままこの体の事も…、…ッ!?
「な、なんだ…、これ、は…!」
頭の中に、膨大な情報が流れ込んでくる。これはタチーハの記憶だ。彼女の歩んできた半生が、俺の中に叩きこまれていく。
「まさか、これは…、『略奪』の能力で…?」
俺の能力は相手の所有物を略奪できたが、まさか、記憶まで奪えたのか!?
そうしてタチーハの記憶の全てを奪い取り、俺はほくそ笑む。
「俺は…、いや、私はタチーハ…。…ははっ、言葉遣いも思うままだ! これはすごいぞ!」
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「なるほどな」
タチーハの記憶を読み取ると、今から一時間後に予定があることが判明した。
どうやら後輩のフタバ達と食事をするらしい。
さて、どうしようかな?
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#A フタバの状態の確認、あわよくば能力を手に入れるため行くための支度をおこなう
#B 断りの電話を入れてタチーハの家や能力、体の探索
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#B 断りの電話を入れてタチーハの家や能力、体の探索
俺には『霊感』がある。タチーハになりすます事も言葉遣いも思うままなのだから、後輩のフタバ達から会話をして幾つか情報を得るのも良いかも知れないのだが。やはり入念に準備をした方が良いと判断した。一番の懸念があるとしても、やはり"コミュニケーション"だ。頭の中にタチーハの記憶があったとしても俺からすれば異性との会話とかは未だに慣れては居ない。
「本当はフタバ達と食事をした方が良いかも知れないけど、能力を手に入れるために不自然な行動とかしたら流石に不味いよな」
リスクとリターンを幾つか考えた上で、先ずはタチーハの事を完全に理解した上でタチーハの家や能力、体の探索をした方が良いと判断した。通話をするのは緊張するから、電子メールやSNSとかのチャットツールを使ってフタバに連絡を取り、断りの内容を送ると。
『用事があるのなら、仕方が無いですね。また時間があれば一緒にご飯を食べましょう!あっ、心配しなくても良いですよ!私の身内には未来予知の能力を持つ人が居ますから、不自然な行動をしたりする人が居たりしたら連絡はしますので!』
と、フタバの返信を見ることが出来たが。フタバの友人の中に未来予知の能力を所有している女が居るのは非常に厄介だ。しかもタチーハの記憶によれば、未来予知が発動するタイミングはランダムと言うおまけ付きではあるが、発動しない事を祈るしか無い。
「まぁ、頭の片隅にでも入れておくかな」
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タチーハ=アルジェ・西東が現役を引退した理由は何個かあるが、大きな理由として出産と育児がある。
旦那はいるのだが、男性は支配される立場なので、タチーハ=アルジェ・西東の家ではほぼ使用人といった立場である。
その旦那は娘のお迎えに行っているようで、後30分ぐらいしたら帰ってくるようだ。
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一応、旦那との相性は以外にも良好であり幸せな家庭を築いている事が判明。実際にタチーハの記憶から引き出した情報からみればタチーハの旦那は容貌も含めてスペック自体は高いと言った感じだ。有能か無能と言えば有能だと言えるだろう。
特にタチーハの旦那は男性が支配される世界の中では珍しく、ヒエラルキーの研究員と言うことであり。男性の中ではまともな分類であると評価されているようだ。
「娘を迎え終えたら、ヒエラルキーの研究所に戻るか。こっちのほうが好都合だな、旦那と出会って会話をするよりも先ずは情報を手に入れる事が優先。使用人の中から使える人材が居れば『独立』-Independence-も使用するのも視野に入れておくかな」
そんな事を考えている内にタチーハの家へと辿り着いた、豪邸と呼ばれる敷地だが。周りにはメイド服を着ている女性が何人か居る。しかもこの中にはタチーハよりは階級は少し低い代わりに、現役で働いているハイスペックの人材が何人か居る。
(暫くはタチーハの使用人を利用して、情報収集したり。タチーハの使用人の肉体を利用して俺の足で調べるのも悪くないな)
手始めにタチーハの家を拠点として俺は入念な準備をする事を決めた。大胆に行動するのは今すぐじゃなくても良いのだ。時間がかかっても良いから、拠点の確保を優先に行動しよう。
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これからのことを考えていると、部屋にコンコンとノックの音が響いた。
「はい。どうぞ。」
タチーハが普段している返事をする。
「ワカーナです。お茶をお持ちしました。」
そう言って、ワカーナが入室してきた。
ワカーナは使用人の1人で『催眠』の能力者だ。
タチーハの記憶によると、年は若いが頭がきれるタイプだ。
スタイルもよく、出るところはしっかりでている。
そして、タチーハを崇拝するほど、尊敬をしているらしく、タチーハの指示には何でも従うタイプらしい。
ティーポケットから、カップに紅茶が注がれると、その香りがタチーハの鼻腔を刺激した。
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嘘だ。だが、ワカーナとしてはタチーハの言葉を疑う、という考えはないらしく、そのまま受け入れてくれる。
それの都合がよくて、このまま話を進めることにする。
「でも、驚いたのよ。この傷のおかげで、新しい『能力』に目覚める事ができたの」
「…! 本当ですか!? タチーハ様に新しい『能力』が! 素晴らしいです!」
さらに嘘を重ねると、ワカーナは我が事のように喜んでくれていた。けどそれも、全て「タチーハのことだから」である。
だからこそ、嘘を吐くこと、騙すことになんの後ろめたさもない。
「本当はあんまり教えたくないんだけど、ワカーナだから特別よ? ねぇ、手に触れていい?」
「はい、勿論です!」
そうして俺はワカーナの手を取り、小さく呟く。
「『略奪』、発動」
>ワカーナから何を『略奪』するか
A:『彼女の支配権』を略奪し、清彦の操り人形にする
B:『催眠』能力を略奪し、そのままワカーナに対し使用する
C:『自我』を略奪し、『独立』と併用し「もう一人の自分」として動かす
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C:『自我』を略奪し、『独立』と併用し「もう一人の自分」として動かす
俺はワカーナの手を取り『独立』と併用し「もう一人の自分」として動かす事を決めた。タチーハの身体よりもワカーナの身体も使う可能性もあるかも知れない。万が一の保険としてワカーナの身体を自由に動かされるようにした方が良いと判断したが。
(嘘だろ!?ワカーナの精神が強すぎる…ッ!催眠能力を持っているから精神的な耐性があると言うことなら、クソッ!作戦は変更だ!)
俺は略奪能力の応用として、タチーハの肉体から離れてワカーナの肉体へと移動する事を決意する。一瞬の内でワカーナの全てを略奪して終えた後、抜け殻になったタチーハを『タチーハの支配権』を略奪し、俺の操り人形にする事で一応解決した。
身体を馴染ませる為には時間がかかるとは言え、ワカーナの肉体を完璧に支配すれば、またタチーハの肉体に戻れば良いと判断した。
「今も、ワカーナの精神は抵抗しているみたいだけど。もう、遅い」
俺は肉体を取り戻そうとするワカーナの精神、魂を俺の魂へと交じる様に仕込んだ。暫くすると徐々に抵抗しなくなるのだが、精神に抵抗出来る人材が居れば今の様に略奪能力は通じない事が解ったのは幸運でもあるが。
「催眠能力さえ手に入れれば。幾らでも略奪能力が使えるからその点は問題無いけど……やっぱり、結構力を使う、な」
今でもワカーナの無理矢理支配した事で俺にもダメージを受けているが、暫くは無理に略奪能力を使って肉体を奪う行為は控えるべきだなと、俺は考えた。
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ワカーナの自我を奪略した俺が「タチーハ様ありがとう御座います。新しい私になりました。」とニヤニヤしながら話しかけてきた。
「あぁ、無事に俺になったか」
「ちゃんとワカーナを略奪したぜ。能力の催眠も使えるぜ。」
「俺だからわかっていると思うが、ちゃんワカーナをやってくれよ。バレたらどうしようもないんだからな」
「わかってるって。じゃないな、、、わかっています。タチーハ様」
「そうそう、そんな感じでお願いするわね。ワカーナ。」
俺もタチーハとして返事をした。
これで手駒が増えた。
ワカーナの能力をどうやっていかそうかを考えた。
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さて、ワカーナの『催眠』をどのように使おうかと思考していると、タチーハのスマホから、電話がかかってきた。
その相手は
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#A フタバ
#B 旦那
#C レジスタンスの副リーダー
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#B 旦那
画面を見ると、どうやらタチーハの旦那、敏明のようだ。
タチーハの俺はスマホをテーブルに置き、スピーカーモードで通話を開始する。
『あぁタチーハさん、お待たせ。フタバを乗せたから、今から家に送るよ』
「ありがとう敏明さん。気を付けてね。それとフタバに、帰ってきたらお茶にしましょう、と伝えておいてくれる?」
『わかったよ。僕は一度帰ったら、またすぐ研究所に行くけど、夜には帰れるから』
「待ってますね。あまり無理しないように」
『ありがとう、タチーハさん。それじゃあ』
そう言って通話は切れた。
タチーハとしての俺はにんまりと笑いながらこっちを見て、
「ワカーナ、フタバの事が気になるのでしょう?」
「それを言ったらタチーハ様だって、愛娘との交流を楽しみにしてらっしゃるようで」
「だって、『俺』の娘なんだもの。いっぱい愛してあげなくちゃ…。ワカーナ、お茶の用意をお願いね」
さて、じきにフタバが戻ってきて、親子のお茶会が開かれるだろう。
俺はどちらに入っておくべきかな。
#A タチーハ
#B ワカーナ
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#A タチーハ
タチーハとして、フタバと親子としての交流を楽しもう。
そのためには、まずタチーハとして怪しまれないように額の傷をどうにかしよう。
「親子であるのは間違いないけど、怪しまれないようにお化粧をするわ。ワカーナも手伝ってくれる?」
「はい。もちろんです。」
「それと、今日は服も可愛いのを着てみようかしら。愛しの旦那様も帰ってくるからね」
「なら、タチーハ様、下着もお変えになったほうがよろしいと思います」
「そうね。なら、ワカーナのセンスで下着と服を選んでくれないかしら。」
「わかりました。」
そんな、会話をしている女性二人はともにいやらしい笑顔をしていた。
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敏明はフタバと手をつなぎながら返ってきた。
「おかえりなさいフタバ。」
しゃがんでフタバと目を合わせ、おかえりの挨拶をする。
そして、「おかえり、アナタ」と立ち上がり
敏明と目線を合わせてキスを求める表情を作った。
敏明もいつものようにキスを返してくれた。
「ただいま、タチーハ。今日はなんだか、おしゃれな衣装だね」
俺ことタチーハの服を見て感想を述べた。
『おしゃれ』といより『セクシー』な衣装をそんな風に表現してくれた。
フタバがいるので、そんな表現ぐらいしかできないのだろう。
今の衣装はワカーナと一緒に選んだものだから仕方がない。
もちろん、下着もそっち方向の物を身に着けている。
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ワカーナの体で女の快楽を楽しみたいとも思ったが、この場所にはフタバもいるため、少しは我慢をしよう。
敏明にセックスアピールもできて、敏明のもそのことに気づいただろう。
敏明の表情を見る限り、今日の夜はしっかりと俺(タチーハ)の体を求めてくるだろうと思った。
敏明と分かれ、フタバと女同士のお茶会をすることにした。
「ワカーナ。『いつも』の紅茶をお願いするわ。」
「わかりました。」
ワカーナに目くばせをして、そのお願いをするとワカーナは意図を汲み取り、しっかりと返事をしてくれた。
その『いつもの』はフタバに睡眠薬入りのお茶のことだ。
お茶会でフタバは「今日のお母さまはちょっと違うような気がする」と言ってはいたが、お茶をごくごくのんですぐに寝込んだ。
なぜ、フタバを眠らせたかというと、フタバの能力を略奪するためだ。
フタバの能力は意識がある状態ではパッシブに働き、その能力を奪うことができない。
そのために、わざわざ眠らせたのだ。
そのフタバの能力は……。
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『常識』-commonsensical- である。
能力の名前だけを聞くとどのような力があるかはわからない。だが、母親であるタチーハはフタバの持つ『常識』という能力をしっかりと理解していた。
『常識』を一言で表すと違和感を消すという能力である。違和感を消してどうなるかというと、何をしてもバレないということである。
バレないは過大評価であるが、周囲の人々にそれは当たり前の行動であると認知させる。これを使えば、街中でオナニーをしようが、全裸で走り回ったりしようが、誰も注意してこず、これらの行為は路上ライブをおこなっているな程度の認識として扱われる。
チート能力のように聞こえるが、『催眠』のように他人を自由に操ることはできず、またカメラ等の画面越しの相手には能力が届かないといった欠点がある。さらに他者に危害を加えた瞬間に能力が解けるという制限がある。
けれども、俺が奪った後に発動すれば、フタバはタチーハが能力を奪うのは当たり前と思うだろう。
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だが、他に能力を発現させていないフタバから見れば、『常識』は使い道の分からない能力だろう。
悪い趣味に目覚めていなければ、何をしても「それを普通」と思わせた所で、意味がないのだ。
だから俺が貰ってやろう。「お母さま」に奪ってもらえるなら、フタバも幸せだろう?
「だからフタバ、その能力を『お母さま』にちょうだいね? 『略奪』、発動――!」
フタバの手を優しく握り、俺の『略奪』を発動する。
次の瞬間、フタバの中から何かが流れ込んでくる感覚がして、フタバの持っている能力が違和感なく俺のものになっていくのが分かる。
これでワカーナの『催眠』、そしてフタバの『常識』の能力を手に入れた。俺は(ある程度の制限はあるが)何をしようと、疑われる事はなくなったのだ。
フタバの能力はパッシブ型だからか、発動させようと思ってもそういった感覚は得られない。だが確実に能力は発動しているのだ。
……いまいち「能力を使っている感覚」が薄いな、と考えながら、今度は何をすることで、略奪した二つの能力の試運転をしようか、と思考を巡らせる。
タチーハとしての記憶と思考、『霊感』能力で理解した俺の3つの能力、そして「俺が何をしても常識である」のならば、こんな事ができるのではないかという考えが、頭の中に現われた。
A:敏明の肉体を『変化』で女性に変られるか試してみる
B:一人使用人を捕まえて、『催眠』を使い奉仕させる
C:どこまで『常識』が通用するか確かめるため、屋敷の中を下着姿で歩く
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#C:どこまで『常識』が通用するか確かめるため、屋敷の中を下着姿で歩く
俺はさっそく下着姿になり、『常識』を発動させる。この状態で屋敷内を歩いても誰も文句を言わないだろう。
今の服装は黒のブラジャーとパンティだけであり、非常にエロい。記憶を覗けば、タチーハも今夜は俊明に抱かれる気が満々だったらしい。
能力の効果の確認も兼ねて、俺は廊下を歩いていた。
しばらく移動すると。俺は窓を清掃しているメイドの子を見つけた。このメイドは確か、屋敷で働き始めて二年目の子だったはず。
俺は彼女の名前を思い出しながら、彼女に話しかけた。
「琥珀ちゃん」
「なんでしょうか、奥様?」
「実は、お茶会の途中でフタバが疲れて眠ってしまったの。でも、私にはこれからの予定がたくさんあるのよ。悪いのだけど、フタバを子供部屋のベットに寝かせてくれないかしら?」
「はいわかりました。清掃道具を片付けたら、すぐにお嬢様をベットへ運びます」
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ここまでは順調だな。よし、次は少し過激なことをしよう。
俺は琥珀と別れた後、二人組のメイドを見つけた。どうやら、彼女たちは自身の担当の仕事を終えた上で会話しているらしい。
俺は彼女たちの会話に割り込んで質問をしてみた。
「ねえ、二人とも。今から私は俊明くんに抱かれる予定なんだけど、今の服装はどうかしら」
「すごい最高です♪黒いパンツも黒いブラジャーもすごく大人っぽいです」
「そうです。その黒い下着が奥様のボンキュボンをいっそう引き立たせています。旦那様も気に入りますよ」
「ありがとう」
凄い。『常識』が想像以上に面白い能力であった。
このままさらに過激な検証をおこないたいが、他にもやりたいことがあるため、一旦タチーハの部屋へ戻ろう。
俺のやりたいことは
#a) 女の快楽を味わうオナニー
#b) タチーハ家の歴史本を読書
#c) その他
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#a) 女の快楽を味わうオナニー
今夜敏明に抱かれるとはいっても、このまま抱かれてしまうのはなんとなく嫌だ。
まずはしっかり女としての快感を味わって、その上で「どちらがすごいのか」の差を確かめよう。
俺はタチーハの記憶を頼りに彼女の私室に戻る。敏明と仲が良いタチーハは、寝室を同じにしているが、それとは別に私室を持っている。具体的に言えば仕事部屋だ。
そこに入る時、近くにいたメイドに「用事ができたからなるべく人を近づけないで」と告げて、下着姿のままに入る。
「さて…、ようやく俺のものになった体を確かめられるな…!」
内心でほくそ笑みながら、黒いブラジャーに包まれた大きな胸を揉む。経産婦であり、快感を知っているタチーハの体は、それだけで胸をもまれた気持ちよさを俺に伝えてくる。
「はぁ…! 女性の胸って、こんなに気持ちいいのか…!」
まずは両手でぐにぐにと、かなりの大きさを誇るタチーハの胸を揉んでいく。それだけで体が熱くなり、喉から吐息が漏れる。気持ちよさが高まり、次第に乳首が立って、ブラの布地越しに突起が見えてきた。
今度はそれを指先でなぞると、
「はぁんっ!」
思わず声が出る。女の胸にある、大きくなった乳首を撫でられる感覚はとても甘美であり、女はこんな気持ちよさを味わえるのかと考えると、少しばかり嫉妬してしまう。
能力だけではなく、気持ちよさまで男以上であるのなら、男はどれだけ辛酸を舐めているのだろう。だが、今や俺は女の、タチーハの肉体を略奪し自分のものにした。この快楽を享受する権利を持ったのだ。
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喘ぎ声を上げながら乳首をこすり続けると、次第に物足りなさを感じてくる。布越しという感覚が邪魔になり、今度は直に触りたくなって、鼻息を荒くしながらブラを剥ぎ取った。
“ぶるんっ”と言わんばかりに、タチーハの巨乳が俺の視界にさらされる。母親という立場の体であっても、いや、だからこそ強調される母性の肉体は、俺を釘付けにした。
そうして今度は、直接乳首をつまむ。大きくなってきた乳首をなんなくつまみ、その瞬間、俺は喉から甘い声を漏らす。
「あぁ…っ! おっぱい、さきっちょ、触られるの気持ちいい…っ! …俺、タチーハの体でいっぱい女を味わってるぅ…!」
くりくりと乳首をこすると、それに合わせて俺もあえぐ。女としての快感が、俺の脳に刻み込まれていく。
次第に俺の下腹部に、タチーハとしては慣れた、俺としては未知の感覚があふれ出てきた。下腹部が熱い。股間から何かが漏れているような気がする。
コレは何だ? 知らない感覚の正体を教えるように、タチーハの記憶が答えを出す。
子宮が熱くなって、おまんこが濡れ始めているのだ。
そうと気付いた瞬間、俺は胸から手を離し、恐る恐るショーツに手を掛ける。ぬちゃ、という水音と俺からあふれ出た愛液が、俺のものになった股間とショーツの間に架け橋を作る。
股間から女の匂いが漂い、俺の脳はどんどんと蕩けていくような気がして、もう歯止めは効かなくなっていた。
そこからはもう、タチーハの行っているオナニーの記憶に任せて、指をおまんこに宛てがい、挿入して、膣内を擦っていく。
「はっ! あぅっ!! い、いぃっ! おまんこいいっ!! こんなに気持ちいいなんてっ、俺、知ってるのに知らないっ!」
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ぐちゅぐちゅと愛液をかき混ぜながら、だらしない顔でおまんこをほじくっていく。ただただそれが気持ちよくて、男の時にやったオナニーなんて、吹き飛ぶような気持ちよさで。
女の快楽に慣れていない脳みそに、熟れた女の体からあふれ出る快楽を叩き込まれては、保つはずがなかった。
「あーっ! イくっ! イくっ!! 俺っ、男だったのに! タチーハの肉体でっ! おまんこでっ! 女としてイっちゃうっ!!」
知らないはずの慣れた指先の動きは、何度も味わった初めての快感を享受させるのには十分すぎて。
決壊がすぐなのは、当然のことだった。
「はあああぁぁぁっ!!!」
俺は背をそらしながら思い切り絶頂し、おまんこから絶頂の潮を噴いて、女の肉体がもたらしてくれる悦びを甘受したのだった。
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女体の一人遊びを満足した後、俺は風呂と夕食を楽しんだ。
風呂場は俺が行ったことのある銭湯よりも広く、湯船もちょうどいい温度であった。また、女の身体の洗い方を知らなかったため、メイドに『催眠』を使って、手伝ってもらった。
『催眠』は実験の結果、『催眠』の対象者が知らないことやできないことは命令できなかった。実際、メイドにどじょうすくいをやれと命令したが、どじょうすくいとはと聞き返された。
夕食時には俊明が帰ってきており、雑談をしながら食事を楽しんだ。料理はタチーハの記憶では食べ慣れた物であったが、俺にとっては初めて食べる美味いフルコースだった。
そして現在、今は俊明が入浴しており、俺は寝室のベットに座っていた。
俺の姿は、ネグリジェというパジャマの一種を着ており、下着は黒とピンクのブラジャーと紐パンを装備している。これらは再びワカーナに選んでもらったものである。
俺はこれから男に抱かれるんだ。弄るだけでキャパオーバーの気持ち良さだった女の快楽。これ以上かもしれない挿れられるという行為を味わってしまったら、俺はどうなってしまうのだろうか。
そう考えると心拍数がどんどんと上がっている気がした。
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「ああぁんっ!」
「タチーハさん、今日は乱暴にされるのがお好みですか?」
敏明はそういいながら、さらに強く揉んできた。大きくなってきた乳首をやや強めにつままれ、俺は快感と共に肯定の声を上げる。
「はいぃっ! 私っ、乱暴にされるのも好きですぅっ!!」
「そうですか、では、こうするとどうでしょうか」
そういうと、敏明は俺の胸を口で吸い始めた。
「んひぃっ!」
突然のことに驚きながらも、俺は『夫』に胸を啄まれたことに幸せを感じる。
「あっ、ああぁっ! 敏明さん、もっと吸ってっ! おっぱい、もっと吸ってぇ!」
「ん、ちゅぱっ、れろ……」
敏明は俺の言うとおりに乳首を吸い続ける。それだけなら自分で行えるくらいの胸を持つタチーハだが、自分以外に舐められ吸われる、どこかもどかしさを感じるその快感に、俺はもう頭が蕩け始めていた。
「ああぁっ、すごいぃ! おっぱいで感じちゃうっ! 敏明さんっ、もっと強くしてぇ!」
俺は敏明の頭を抱き寄せながら、さらに強く吸うように命令する。胸の奥から熱い何かが沸き上がってくる。すると、俺の胸から母乳が噴出し始めてきた。
タチーハの肉体としては懐かしささえ感じる母乳、それが夫である敏明に吸われている。
「あっ! あっ! 母乳、吸ってるぅっ!」
「んふ…、ちゅぱっ、んくっ……」
「ああぁっ! 敏明さんが、私の母乳吸ってるぅっ! んうぅっ、フタバも飲んだおっぱい、敏明さんに飲まれちゃうっ!」
「んくっ、んっ……。タチーハさんの母乳、美味しいですよ」
「あぁっ! 嬉しいっ、敏明さん、私のおっぱい飲んでくれてっ! 私、フタバのお母さまなのに、今だけは敏明さんの為のメスになっちゃてるぅっ!」
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俺は敏明が母乳を飲んでいることに、女として可能な事をしているという倒錯感を覚えながらも興奮していた。
「ああぁ、気持ちいいっ! 敏明さんに母乳吸われるの気持ちいいよぉっ! もっと、もっと強く吸ってぇ…! 私のおっぱいで気持ちよくなってぇっ!!」
俺は敏明の頭を抱えて、さらに強く自分の胸に押しつける。すると、敏明はそれに応えるように、さらに強く吸い、飲み始めた。
「ああぁあっ!! すごいぃっ! ああぁっ、もうだめっ! 私っ! イっちゃうっ! おっぱい吸われてイっちゃうっ!! イくっ、イきますっ!! イっちゃううぅぅっ!!」
そして俺は盛大に絶頂した。母乳を噴出し、潮を噴きながら、女として最高に幸せな気分に浸るのだった。
女性器を触ってない筈なのに絶頂した事で、俺は「こんな絶頂もあるのか」と、おぼろげになった思考で考え、それさえも快感の波に溶かしていく。
「あ、あぁ…っ」
「ふぅ…、ごちそうさまでした」
俺が絶頂の波から戻ってくるのと同時に、敏明が胸から口を放す。飲み切れていなかったのか、口元から俺の出した母乳がこぼれているが、敏明は気にした様子がない。
そして俺のネグリジェと下着を脱がして、裸になった俺を見る。
「タチーハさん、とても綺麗です」
そういう敏明もすでに裸になり、股間にある男性器が大きく勃起している。
あぁ、これで俺は、今から犯されるんだ。経産婦であるタチーハの肉体で、初めて女として抱かれるんだ。
そう思うと、俺はもう我慢ができなかった。
「敏明さん、お願いです…、私を抱いて…。いっぱい愛して…」
「はい、喜んで」
敏明はそういうと、既に濡れそぼった俺のおまんこに男性器をあてがい、音さえするような勢いで一気に挿入した。
熱を持った杭が、俺のおまんこの中に突き立てられる。女の象徴が、男の象徴を奥へ奥へと呑み込んでいく。声を我慢する事なんてできなかった。
7d8a6906 No.1239
「ああぁんっ! きたぁっ!」
「タチーハさんの中、すごく気持ちいいです…!」
女として男に貫かれているという事実、それを受け入れているタチーハの肉体、そしてセックスの快感という濁流にのまれている俺の脳は、もはや取り繕うことが出来なくなっていた。
「俺もっ! ああぁっ、敏明のちんこ、すごく気持ちいいよぉっ!!」
「タナーハさん、動きますよっ?」
「はい! いっぱい動いてっ!」
タチーハに宣言し、敏明はゆっくり腰を動かし始める。抜いて、挿されて、膣内を抉られて、女として男とセックスをする快感が、俺の体に押し寄せる。その快感に、俺はまた声を出してしまう。
「あぁっ! すごぉっ! 敏明のちんこっ! 気持ちいいっ!! あああっ!!」
「タナーハさんの中もすごく締まって、気持ちいいです!」
敏明のちんこをタチーハ(俺)のおまんこが締め付け、お互いがお互いに快楽を与え合う。女としての行為と、男としての行為が重なって、一人ではできない、相互に与え合う気持ちよさが体中を駆け巡る。
女としてされる行為によって、敏明が気持ちよさから声を上げつつ、それでも腰の動きを止めようとしないのは、妻であるタチーハ(俺)を気持ちよくさせようとするための行為なのだろう。
それがただひたすら気持ちよくて、同時に心地よかった。自分一人で終わらせず、妻を慮る行為を、敏明は続けていく。それによって、俺はタチーハの身体でひたすら快感を突きあげられていく。
「ほんとっ? あぁっ、嬉しいっ!もっと気持ちよくなってぇっ! 俺のおまんこで、いっぱい気持ちよくなってぇっ!!」
「はい、タナーハさんのおまんこ、とても気持ちいいですよ…! まるで、新婚初夜の時のようだ! 僕のを締め付けて、放してくれない…っ!」
俺の方も、敏明のちんこをキツく締め付けているのがわかる。タチーハが愛している男の分身を逃がしたくない、という意志のもと、締め付けを強くして、放すものかと言わんばかりに敏明のちんこを放してくれない。
引いて突かれ、奥まで届く敏明のちんこ。俺のおまんこは奥までゴンゴンと突かれ続けて、絶頂を迎えようとしている。子宮が敏明の精液を求め、欲しようとして降りてくるのが分かる。
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強い満足感を得て興奮をしていたのだが、ここちよい疲れもありいつのまにか敏明の腕にだかれたまま眠りについていた。
目覚めはよかった。
心地よい朝日がカーテンの隙間から差し込み、その明るさで目が覚めた。
敏明はすでに起きているのか、隣にはいなかった。
布団をめくると、何も来ていない状態だった。
男の時にあった朝立ちがないことに違和感だが、今の俺は『タチーハ』だから、朝立ちがないのはあたりまえなのだ。
そんなことを考えていたが、扉の向こうからメイドのワカーナから「朝食のご準備ができました。フタバ様たちもお待ちです」と声をかけられた。
af9c9c66 No.1254
「ちょっと待っていて」
流石に全裸で朝食を味わうわけにはいかない。俺は急いで今から着る服を選んでいた。
今日は誰かに会う予定も外出する予定もない。それに明日は俊明の仕事は休みである。だったら、今日はこのカジュアルでのんびりしやすい服装でいいか。
俺は着替え終わるとワカーナに軽く「お待たせ」と謝り、美味しそうな匂いのするダイニングへ向かった。
4ec4e24b No.1307
朝食はいつもの様に楽しく家族の会話でもりあがった。
でも、本当はいつもとは違うのだが、そのことに俊明をはじめ、ワカーナ以外知ることはなかった。
朝食も終わり、今日の過ごし方をどうしようかと悩んだ。
もっとメイド達から有効な能力を奪うのか、それとも昨日の快楽があまりにもよかったので、俊明との楽しい時間をすごそうか。
普段タチーハがしているようにフタバの能力特訓をして、怪しまれないように過ごすのか。
いろいろと悩んでしまった。
c8866a20 No.1321
とりあえず、これからのスケジュールを書こう。
この身体を乗っ取る前も念密に計画を立てたんだ。なら、これからの方針の為にも、やらなければいけないことを整理しないといけない。
俺はタチーハの仕事部屋に入り、一冊の白紙ノートとペンを取り出した。
白紙ノートの一ページ目には《将来的な目標》と大きく書く。そして、次のページの上側に《今できること・やりたいこと》と書いた。
今の俺はレジスタンスに手を貸せたら貸すといった中立的な立場を求めている。つまり、将来的な目標は今の立場の盤石化である。中立な立場を一定的に保てれば、レジスタンス側か女性社会側のどちらかが不穏な状態になっても被害が少なくすますことができる。
とりあえず、今できることは能力を使うことだ。
今持っている能力を書き出してみる。
『変化』『独立』『略奪』『霊感』『催眠』『常識』
後半の三つはこのタチーハの身体になってから手に入れた能力である。また、ワカーナの身体は独立で動かしているので、ワカーナの肉体にもなることができる。
後は、レジスタンス時代に男性の立ち入りを禁止いた場所やタチーハがいた元職場にも一応潜入することができるな。
最後にやりたいことをまとめよう。
この屋敷には後3人のメイドが能力を所有している。
一人は昨日『常識』を使用中に話しかけたメイド、琥珀だ。本人の口から聞いていないため、どんな能力を持っているのかはタチーハも知らない。
残りの二人は現在休暇を使っているため、今は屋敷にいない。彼女達が戻ってきたら、改めて考えよう。
他は能力の実験だ。試したいものはメイド達に使ってみよう。
「よし、今日の予定は、琥珀の能力を略奪し、それをメイドに使おう」
ちなみに、もう一度俊明に抱かれたいと書いたが恥ずかしくなって斜線で消した。
02e28fd3 No.1328
#書き始めた人です。
#琥珀の能力一案として。
#『模倣』-Imitation-
#他者の「能力」や技能を模倣し、制限はあるが自分のものとして使えるようにする能力。
#『霊感』使用後の隠された能力。
#自分が所持している技能や「能力」を相手に模倣させ、使用させられるようになる。
#こんなものを考えておりますが、使う使わないはご自由にどうぞ。
c8866a20 No.1343
「奥様、失礼いたします」
贅沢な昼食後、俺は琥珀が話しかけてきたことに驚いた。
タチーハの記憶を探るに、琥珀は普段から黙々と仕事をおこなうタイプであり、会話も基本的に受け身である。もしかして、仕事に関することなのだろうか。
「どうしたのかしら、琥珀ちゃん」
「はい、実は、おいしい、デザート屋さんを、見つけたので、ぜひ、奥様に同行をお願いしたいと願いまして」
俺は嘘だろうと二重の意味で思った。
普段の態度とは違い、態度があまりにもおかしい。琥珀の会話文の区切り方がカタコトであり、琥珀の目は明らかにキョロキョロと泳いでもいた。あと、『お願いしたいと願いまして』って、明らかにおかしな日本語をしていた。
そして、おそらくこれは罠であるかもしれない。明らかに嘘をついている素振りを見せているうえ、場所も知らされていないデザート屋も怪しい。これに同行した場合、絶対に、待ち伏せした誰が俺を襲ってくるだろう。
けれども、逆に言えば好都合なのかもしれない。タイミングを見計らえば、琥珀の能力を第三者に知られることなく略奪できる。うまくいけば、琥珀の協力者の能力も略奪できる。最悪の場合は、他人の肉体を略奪して生き延びればいいだろう。
ならば、俺が言うべきことは
「ええ、よろこんで」
51344490 No.1348
「では、さっそく駐車場にある私の車に乗って行きましょう」
「あ、そうだわ。琥珀ちゃん。私が出かけることを今からワカーナちゃん達に伝えないといけないわ」
「はい、しっかりと、伝えて、おきます」
琥珀の目は再度泳いでいたので、伝える気が無いとわかった。秘密裏に俺を連れ出していく予定なのだろう。
琥珀が先に駐車場へ向かったので、俺はワカーナに連絡をした。ワカーナはすぐに理解し、とある準備をしてくれた。
駐車場へ向かうと琥珀が手を振っており、普段琥珀が運転している初心者マークの車に乗り込んだ。そして、琥珀は俺がシートベルトをしているのを確認すると、すぐに出発した。
道中、琥珀は運転に集中しており、略奪が使えるほど隙だらけであった。しかし、俺は略奪を使うタイミングは今で無いと考えている。
その理由は二つ。
一つは琥珀が何の能力を持っているのかわからないことである。仮に琥珀の所有している能力が略奪を失敗させる能力であったとき、俺が本物のタチーハでないことがバレる。そうなったら、略奪を封じられながら殺される可能性が非常に高い。インターネットでは、犯罪者や捕虜用に能力を封じる手錠が高値で売買されている。
もう一つは、琥珀が運転に集中をしすぎていることだ。現に、もし略奪を使ったら、ハンドルを切り間違えて事故を起こしそうな雰囲気を琥珀は醸し出していた。むしろ、現在進行形でこちらもドキドキしている。
こうして、俺を乗せた車は安全第一の状態で山奥へと入っていった。
e720cc3c No.1366
車から降りてしばらく歩くとと、ぼろぼろの古民家に着いた。山の中にあるので、誰かが放置していた建物に見えるが、玄関の扉や窓等が綺麗にされていた。
「こちらです」
琥珀は主人を先行させるように扉の横に立つ姿は露骨に怪し過ぎた。デザート屋とは関係ない住居跡は罠であるといっているようなものだ。
しかし、これは政府等の巨大権力がタチーハを貶めるための罠だとは思わない。わざわざ、罠ですとわかってしまうくらいに嘘が下手な人を案内の配役に置いたりしないだろう。俺はターゲットが警戒する可能性が高いと考えるのでしない。
そしたら、琥珀の目的は一体なんだ?このような場所に連れてくるわけは?
ともかく、ここまで来て中に入ろうとしないのは琥珀に怪しまれる。琥珀の能力がわかっていないため、変な行動をとることは未知の危険が発生するということだ。
まあ、俺には『略奪』や『催眠』という相手に対しての能力があるし、万が一の保険も用意している。
俺は意を決して、錆びついたドアノブを回して廃墟に入った。
瞬間、首元から20cm離れたところに小型ナイフが近づいてきた。
e720cc3c No.1367
刃物のを持った手は後ろから伸びている。持ち主は、
「琥珀ちゃん」
「はい」
予想通りであった。そして、室内に入ったタイミングで仕掛けてきたことから、おそらくこの家に何かしら仕込みがあるのだろう。
「琥珀ちゃん、どうしてこんなことをするのかしら?」
俺は本性を隠しつつ、タチーハの振りをして琥珀の目的を探ろうとした。
「もう演技はやめてください。『略奪』を持つ能力者さん」
俺は呆気を取られてしまった。なぜ、俺がタチーハでないことがバレたんだ。いつにどこでだ。
俺が頭をフル回転していることをよそに、琥珀は淡々と語り続けた。
「ええ、私はあなたをここに呼び込ませるために嘘が下手な演技をしました。嘘と分かりやすい演技で、こいつなら能力で奪えるといった感情を与えていました。ちなみに今はまだ他の人にあなたの正体を話していません」
話していないということは、俺の動き次第では話すつもりなのだろう。
「そして、あなたの正体を知ったのは、私の能力『模倣』です。他人の能力をコピーできる能力である『模倣』で、あなたが『略奪』の能力を持っていることが分かりましたし、『略奪』の効果を知って、あなたが奥様でないことを理解しました」
なるほど、琥珀ちゃんの能力は『模倣』だったのか。
「ちなみに、あなたの『略奪』は効きません。模倣している間は模倣している能力同士の影響を受けないんです。なので、あなたの『催眠』『常識』『変化』『独立』は一切無効です」
「何が目的だ?」
「お金です。あなたの秘密をバラされたくなければ、毎月給料とは別のお金を手渡しで私にください。そうですね、毎月100万以上貰いたいですね」
afa166b3 No.1368
俺は琥珀の話を聴いて、パズルのように頭の中で答えが出てくるのを感じた。おそらく、『霊感』の認識の力だろう。
保険が来るのにも、あと少し時間がかかりそうだ。その間に時間稼ぎのための俺の推理ショーを琥珀に聴かせよう。
「琥珀ちゃん」
「何。奥様の真似はしないで」
「さっきまで話していた内容にいくつか疑問点があったから、ぜひ聞こうと思ったから独り言として話しておくぞ」
「!。やっと本性を現したのね」
「まず、琥珀の『模倣』という能力で俺の能力をほとんどコピーしたよな。けれども、大事な能力『霊感』についてコピーしていない。なぜなんだ」
「私にもわからないわ。奥様があなたに略奪されていないころから『霊感』だけは模倣ができなかったのよ」
「なるほど。つまり模倣の能力は個数制限ではなく、対象者の能力をまるまる模倣する能力なのか」
「どうしてそれを!」
「ああ、それはこの家に連れてきたときに感じたことだ。おそらく家にいるのは、認識を阻害するタイプの能力者だろう。そして、家の中なら第三者にバレずに俺を脅迫できると踏んだ。誰かに俺の秘密を聞かれたら、俺は脅迫されてお金を払う必要がないからな。それに俺は能力で逃亡を簡単にできる」
「そうだ。それがなぜ、私の『模倣』と繋がる」
「いや、繋がるぞ。『模倣』で認識阻害系の能力をコピーしているなら、わざわざ俺をここまで連れてくる必要はなかった。人気のない近場で済ませばいい。それこそ、俺の仕事部屋でもいい」
ちなみに、俺を刃物で脅したのもヒントになっている。街に行けば女性能力者が何人もいる。その中には、攻撃的で物理に作用する能力を持っている人もいるだろう。タチーハの現役時代の知り合いにも何人かいる。
「そうね。『模倣』の欠点がわかったところで」
「ちなみに、それ以外にも推測できたことがある。たとえば、この家は誰かが住んでいるんだろ。玄関等が綺麗だったが、屋根や壁の所々がボロボロだ。修復されていないことから、住居として過ごせる場所に限りがある。とりあえず、認識阻害の能力者と琥珀ちゃんが住んでいるんだろ」
「そんなことも」
「まあ、琥珀がこんなにもお喋りしているのは初めて見た。もしかして、おしゃべりが好きなの?秘密を隠すために無口なふりをし続けていたのね」
「もう黙って!あなたはいま孤立して助けがない状態よ。ただ、私達のためにお金を払ってくれるならすぐに解放するわ」
「お金は払えないけど、今度お茶会を開くことはできるわ。秘密を知っているもの同士のね」
「ワカーナも一緒にどうかしら」
「!」
「お誘いありがとうございます。タチーハ様」
b894ed53 No.1372
俺の駒であるワカーナが現れたことで、琥珀ちゃんは完全に動揺していた。『模倣』能力があったとしても既に手中に収めている存在までは認知出来なかったのだから無理は無い。
「まさか、ワカーナ様を既に支配していたなんて…っ!」
「無論、その代償はかなり高く付いたぞ。『催眠』の能力者を支配するのに俺の精神にかなりのダメージを受けた。現在はワカーナの肉体しか移動できないのが懸念があるけど。さて、俺をこの場で始末すればどうなるのか想像は付くだろう?」
頭の回転が早い琥珀ちゃんの事だ、『模倣』能力で俺の力を知っている以上。その結論は決定的となるのだから。
「まさか"人質"か…ッ!」
「その通りだ、琥珀ちゃんはどうやらワカーナに相当恩を売っているようだな?この屋敷を働けるようになったのは全てワカーナのお陰。俺を始末すれば恩人だったワカーナは居なくなる。もはや一心同体なんだよ」
実際は単なる脅しに過ぎない、所謂ブラフと言うやつだ。本当の事を言うと俺を始末したとしても既に駒となっているワカーナの肉体へと強制的に移動するだけになるのだが。現在の琥珀ちゃんは冷静になっていない、俺の言葉は"真実"に聞こえるのだから。
b894ed53 No.1373
「なぁ、琥珀ちゃん。お前が欲しいのはお金なんだろう?毎月給料とは別のお金を手渡し、毎月100万以上与えるのは正直に言うとかなり厳しい。琥珀視点から見ればタチーハは表面上ではお金を沢山持っているように見えるが、実際は旦那である敏明の方が収入的に多いんだよ」
俺はタチーハの記憶から真実を告げた、全ての生活において此処まで成り立っているのは敏明の収入源があるからこそ、今の様な贅沢な生活が出来る状況を説明する。
「成る程、つまり奥様は旦那の紐だったという事ですか。」
「その通りだ、俺も自由にお金を使いたくても敏明が色々と管理しているのもあり琥珀ちゃんのお願いを叶えたくても出来ないのが現状だ。それなら略奪で敏明を奪えば良いと言う発想に至るかも知れないが、俺の能力は"女性"限定だ、『模倣』能力で手に入れた琥珀ちゃんなら解るだろう?俺の推理だと既に男に対して能力が通用しなかった。だからこそ俺をこの様に脅して、お金を貰おうとしていた。こんな所だろう?」
「……………………」
琥珀ちゃんは俺の言葉を聞き入れてかなり動揺している様だ、正直に言えば琥珀ちゃんが持つ『模倣』能力はあまりにも強すぎる。だからこそ俺は"そんな彼女を手に入れようとしていた"。琥珀ちゃんの意思で、俺の事しか考えられない様に様々な話術で。手中に収める為に。
「改めて、俺の目的を言おう。今の俺はレジスタンスに手を貸せたら貸すといった中立的な立場で居る。将来的な目標は今の立場の盤石化。中立な立場を一定的に保てれば、レジスタンス側か女性社会側のどちらかが不穏な状態になっても被害が少なくすますことができる。要するにどっちでも対応出来る様に、今は"自分自身の安全を優先している"。琥珀ちゃんの願いを叶える為には、俺の安全が完璧じゃないと行動は出来無い。」
「成る程、話は理解出来ました。ワカーナ様を人質に取っていながら。ゲスのような思考をしていると思いましたが、此処まで考えていたのですね」
「琥珀ちゃんの『模倣』能力は俺が居るせいで迂闊に変更できない。仮に別の能力とか上書きしてしまえば、俺が琥珀ちゃんを駒にするために行動しようと考えるのが目に見えている。だからこその取り引きだ。安全さえ確保する為に力を貸してくれるのなら、その願いを叶えてやる。とうだ?悪くないだろう」
この提案を受けるメリットに関してだが、少なくとも琥珀ちゃんからすれば受けても良いと考えている。お金に関しては現時点では直ぐに用意する事が出来無いが、ワカーナを人質にしているせいで実際は心の底では俺を始末しようと行動する可能性は高いかもしれないが。
(俺の事を完全に信頼関係を築きさえすれば、その脅威は無くなるはずだ。どうだ?この取り引きに乗るか、乗らないか)
c8866a20 No.1376
俺の交渉術に琥珀は歯軋りをした。
しかし、琥珀は深呼吸をすると
「もう一つ条件を追加することはできますか?」
俺との交渉に対して要求を上乗せしてきたのだ。
ワカーナを人質にしているため、こちら側が立場は有利なはずだ。つまり、先輩であるワカーナの命よりも大事な秘密があるということだ。
「内容次第だ」
「わかりました」
琥珀は手に持っていた刃物を俺の首から遠ざける。そして、琥珀は玄関で靴を脱いで俺の前にたった。
「ついて来てください。家の居間で話します」
俺とワカーナは琥珀の後ろを歩くと、ちゃぶ台がぽつんと置かれた部屋に着いた。
「ここが私達の家の居間です。申し訳ないのですが、座布団はないので好きなように腰をおろしてください」
部屋は5畳の広さだっただろうが、破れたふすまや穴の空いた壁で本来よりも広く感じていた。
俺が胡座をかいて座ると、フタバと同い年ぐらいの男の子がひょっこりと顔を出した。
「お姉ちゃん、この人だあれ?」
「ごめんね、アキラ。お姉ちゃんは今からこの人と大事なお話をするの。もう少し我慢してね」
琥珀がアキラと呼んだ少年は「わかったよ」と言って、トタトタと去っていった。彼の顔をじっくりと見てなかったが、おそらく
「なあ、あのアキラっていう子供は琥珀の弟か」
「そう、私の弟よ」
やはりと思った。しかし、そのあとに琥珀の口から出た言葉は、俺の霊感でも予想していなかったものであった。
「そして、政府が欲しがっている特別な能力者よ」
c3c81944 No.1379
「政府が欲しい特別な能力…その能力は聞いても良いか?」
「私の弟には貴方と同じ様に"複数能力"が備わっている。その能力はまさに世界を揺るがす様な物だと伝えておく。此方の目的はお金の他にも政府から私の弟を守って欲しい。それを守ってくれるのなら、自分の肉体を差し出しても構わない」
その事実を聞いた俺は驚愕するの無理はなかった、琥珀は自分の弟を何が何でも守りたいと言う想いを伝わったからだ。かつてレジスタンスに所属している俺には琥珀の気持ちは凄く理解できた。大切な家族を失いたくない純粋過ぎる心を目撃したのだから。
「家族を守る為にお金が欲しかったんだな、他にも圧倒的な権力も求めているのか?」
「勿論、『模倣』能力で地位がとても高い女性に関する情報はあります。しかし、能力が強ければ強い程此方が乗っ取ろうとしても返り討ちに合えば"裏切り行為"だと判断させてしまう。家族を守る為なら手段は選びません。私の弟だけは絶対に守りたいのです」
「解った、その約束は必ず護る。だが、口約束では流石に駄目だよな?」
「勿論です、今から貴方には"自己強制証明(セルフギアス・スクロール)"を結んで貰います。」
自己強制証明を結ぶと聞いた俺は内心では、仕方が無いと考えていた。如何なる手段を用いても解除不可能である絶対的な呪い。契約違反であると見做された時点で問答無用で呪いは発動してしまい、その行為が中止されない限り呪いは持続し続け、最終的には目や口から血を溢れさせた苦悶の表情で死に至るのだから。
「良いだろう、その契約を確認させてくれ」
8c3be0f7 No.1380
#書き始めた人です。
#琥珀の弟・アキラの能力案をまた提出させていただきます。
#本編を書けず、こんな形でネタの投下をして申し訳ないです。
>1つ目
#『逆転』-Inversion-
#相手と自分の状況を逆にする能力。
#立ち位置、状況、傷の有無などを相手に押し付けたり、自分が引き受ける事が可能。
#『霊感』使用後の隠された能力。
#社会的地位なども『逆転』させられる。後述の『拡張』を使用して世界中に『逆転』を行う事で、容易に世界の構図を書き変える事が可能
>2つ目
#『拡張』-Ingrandimento-
#指定した物品/能力の効果を増大する能力。
#拡張するサイズ/範囲に制限はない。
#『霊感』使用後の隠された能力。
#本当に拡張の範囲に制限がない。地球全体を範囲に収める事が可能。
>3つ目
#『固定』-Pinning-
#指定したものをその場に『固定』する能力。解除は能力者の任意。
#固定されたものは、あらゆる現象から保護され、仮に爆発に巻き込まれても傷一つない。
#『霊感』使用後の隠された能力。
#固定可能なものは物理的なものに限らない。概念も地位といった、形のないものも固定される。
#こちらも『拡張』と併用すれば、世界の支配図を『固定』することが可能。
c8866a20 No.1384
「はい、契約内容は『私は琥珀の弟である南北アキラの安全と命を護る』でお願いします」
「それだけでいいのか。お金とかは?」
「ええ。金銭に関しては、あくまでも弟を守るための手段を増やすために欲していただけよ。タチーハ=アルジェ・西東の立場とあなたの人間関係で弟を護っていただけるなら、しばらくは必要ないと考えただけよ」
確かに現役を引退したとはいえ、タチーハの地位はしっかりと支配階級の中間以上にいる。また、俺自身はレジスタンスのメンバーと交流がある。そして、俺は中立の立場を目指していることを話した。琥珀の弟を護るならばこれ程までに優良な立ち位置を持つ人間は、俺以外にまったくと断言していいほど存在しないだろう。
この契約内容は俺にも利点がある。琥珀の弟、アキラは政府が欲しがる能力を持っている。言い換えれば、政府と敵対できるほどの能力をアキラが所有しているのだ。
俺がアキラの安全を護るという契約をすれば、俺はアキラの能力を自身の範囲内で所有することと同意義だ。そうなれば、アキラを使って政府と交渉の舞台に立つという切り札等が手に入れることができる。
今の俺は略奪ができるといっても、遠距離による攻撃を受ければ一瞬でゲームオーバーだ。俺の『略奪』も『催眠』も『霊感』も遠くから放たれた弾丸や能力には対処ができない。政府が俺の存在と能力に気づいたら、十中八九迅速に暗殺してくるかもしれない。
しかし、アキラという爆弾のような能力者を護衛することによって、俺はアキラの能力を盾に暗殺してくるの可能性を減らすことができる。そうすれば、相手は俺がアキラの能力の一部を略奪したのではないかの推測し、より慎重的に動いてくれるだろう。
政府から俺も狙われるというデメリットともあるが、レジスタンスにいた俺がタチーハの肉体を略奪した時点ですでに安全性は存在していない。それにタチーハ後輩の中には予知系能力者がいるのだから、そのうち俺の正体はばれるだろう。
なら俺は、
「その契約内容で自己強制証明を結ぼう」
c3c81944 No.1395
こうして俺は自己強制証明で琥珀と契約する事になったのは良いのだが、今後について新たに考えないといけない事が幾つもある。
「なぁ、琥珀。契約内容にどうして俺が自分の事を襲わないとか記載しなかったんだ?」
「私の肉体を使用する場合のケースを考えたんです、略奪を使えば自己強制命令の契約内容に引っかかると思いましたので。それに、私は弟だけは守る事が出来るのならそれで良いですから」
「いや、ちょっと待て。俺が言うのも何だが、アキラを守るとしても琥珀が居なくちゃ流石に駄目だ。このお話を聞いた以上、アキラは絶対に琥珀が居ないと能力が暴走する可能性があると思う」
琥珀は自分の肉体を差し出しても良いと言う覚悟は立派な事だが、俺は琥珀を支配する気力すら一切無かった。寧ろそんな事をすればアキラは悲しむだろう。家族を守りたいと言う純粋な想いを感じたからこそ今の様な気持ちになっているだから。
「だから俺は琥珀を支配と言うか、略奪とかは絶対にしない。ワカーナを完全に支配してしまったのは本当に申し訳ないと思っている。だが、俺は……」
「もう良いんです、ワカーナが人質に取られた時は冷静になれなかったのですが……安全さえ確保すればワカーナは解放する事も視野に入れていましたよね?タチーハ様の事はもはや屑なのでどうでも良いですが」
琥珀の鋭い指摘に俺は思わず苦笑いをしてしまう、どうやらタチーハの事に関しては最初から目向きとか無いと思っていたそうだ。ワカーナを解放すると言うのは確かに頭の中に選択肢としてあったが、もし俺が殺られてしまえば元のこと無い。
「それなら、琥珀。何か提案とか無いか?政府の情報とかがあれば」
「勿論です、私が手に入れた情報に関しては此方の資料を見てくれると助かります」
そう言うと琥珀は本棚にある一冊のファイルを取り出して俺に見せてくれた、その情報は"明らかにレジスタンスが欲しい情報ばかりだ"。新入経路やセキュリティとかの様々な情報、しかもタチーハの個別情報までもが抜かれている。
「模造能力で様々な情報を抜き取ったんだな?」
「えぇ、私だからこそ出来る術ですから。ただ私は"親友"と呼ばれる人物以外なら、略奪とかしても構いません、貴方は知らないと思いますが。女同士でも嫌いな人物とかたくさんいますからね」
「……親友以外なら、略奪しても良いって。もしかして俺が指定した人物を指定した場所へ誘導とかは」
「可能です、階級にも寄るけど。此処から此処までの人なら私の話術で引き寄せる事は出来ると思うわ」
こうして俺はこの日、琥珀と一緒に作戦会議を開いた。政府からアキラを守る為、他にも俺と琥珀の安全等、色々とやらないといけない事が多いのは仕方が無いが。
「ある程度は情報が纏まったけど、略奪したい人物は何人か絞れた。一応聞くけど、その能力は確かな物なんだよな?」
「間違いはありません、実際に"友人"として教えてもらったので」
「お前、本当は友人となっていても本当の意味で親友じゃなかったら見捨てるタイプだろ?」
「まぁ、そうですね。親友となっている人物は数人程度ですけどね」
やっぱり、琥珀は敵に回すのは駄目だ。今回ばかりは味方で良かったと心の底からこの選択は間違っていないと確信する事が出来た。
c8866a20 No.1398
「ちなみに参考で聞くが、アキラくんの所持している能力はどんな能力だ?」
「把握できていないわ」
「把握できていないって、どういうことだ?」
「私の『模倣』や親友の能力、他人がどんな能力を持っているのかわかる能力ね。あとは政府の資料で調べた結果、アキラは少なくとも能力を七つ持っていることがわかっているの。けれども、半分以上の能力がわからないの」
「能力がわからない?」
「ええ。どんな効果を持っているのか。どこまでの範囲に効果が及ぶのか。それらを含めて正体不明の能力を五つほど持っているのよ」
「わかっている能力は?」
「今アキラが使えるのは『未開』と『拡張』。そして、政府の予知能力者が発見した『逆転』よ」
「『未開』は空間の認識を阻害させる能力だろ。それを使っている間は、一定範囲内に人がいることを範囲外の人達に認識させない能力。レジスタンスの仲間にその能力を持っている奴がいるんだ。ただ、『拡張』と『逆転』は聞いたことないな」
「『拡張』は指定した物品や自他の能力の効果を増大する能力よ」
「じゃあ『逆転』は?」
「あくまで盗みみたような情報よ。都市伝説ぐらいの信用度しかないわ。けど、『逆転』をたった一回使用するだけで国家を転覆することができるって話よ」
「国家を転覆…」
想像より斜め上だ。
アキラの持っている能力の数は俺が現在所持している数よりも多いらしい。
しかも、現在使えるのは『未開』と『拡張』の二つだけ。
残りの五つは正体不明の能力であるが、国家転覆をおこなえる可能性があるらしい。
もしそうなら、アキラの能力は爆弾ではなく、核兵器に匹敵するだろう。扱い方を間違えれば、俺だけでなくレジスタンスや西東家全員が御陀仏になる。
俺はアキラについて、もっと詳しく聞きたがったが、外の夕陽が沈みかけていた。予定もないのに出掛けた俺は自宅に帰らないといけない。じゃないと、タチーハをメイドや家族が心配してしまう。
琥珀が体調不良で家まで連れていき介護をした。という嘘を使用するため、俺とワカーナだけで屋敷に帰った。
>アキラの能力は一気に判明するよりも、小出しで出していくのが盛り上がると思って書きました。
bf2917c0 No.1400
家に帰宅した後、俺はタチーハとして完璧に振る舞いながら今後の展開について考えた。正直に言うと琥珀から得た情報はあまりにも重要すぎる事もあり、どの様に利用するのか本気で考えなければならない。
資料の中では恐ろしい事も書いてあったが、能力が強ければ強い程、精神面に関して明らかに強い女性が何人か存在する。無論、琥珀の様に能力とかは通用しない女性も存在するとしても。俺もまた力を付ければ略奪能力でスムーズに行う事が可能となるのだが。
(一先ず、琥珀が俺に是非とも略奪して欲しい女性が一人だけ候補とかしてオススメして貰えたけど。確かにその女性の肉体を手に入れる事が出来れば、"安全"が保証されるのは間違い無いかな)
琥珀が俺の安全を確実に保証してくれる人物を紹介したその女性の名前は"翡翠"だった。琥珀との関係は従姉妹の様な存在、翡翠からすれば琥珀と仲良くしているつもりでも琥珀は心の底から切り捨てたい人物だと告げていた事はよく覚えている。
肝心の翡翠の能力は"隠蔽"-hiding-だ。
一見から見てみればよくある能力かもしれないが、この能力は"精神面に関してはどんな事を探られ無い"のだ。相手側が心を読む能力があったとしても、中身が別人かどうか判断仕様にも。判別する事は不可能である以上見極める手段は限られて居る。もし、琥珀と一緒に行動する場合に備えてので翡翠を略奪すれば行動範囲が広がるとの意見を貰ったのだから。
(他にも幾つかやりたい事があるとしたら、タチーハの権力を使って政府に関する情報を抜き取るのも一つの手段だな。琥珀の情報は信用出来るけど、今の立場ならもう少し情報を得る事も可能かもしれない)
現在、俺が所有しているお金に関してだが。敏明が暫く此処に帰れないと言っていたからある程度のお金は用意しているから資金面は問題とか無いだろう。明日は幸運にもタチーハの予定はフリーだから、自由に行動が出来る。
(さて、俺はどんな行動をするべきか…)
#A:新しい肉体を確保するため、琥珀と協力をして翡翠の肉体を略奪する
#B:レジスタンスに幾つか情報を提供する。今まで連絡しなかったが、一先ずレジスタンス側の情報を確認する。
#C:引き続き、タチーハとして振る舞い。政府の情報や幾つかの情報を得る為に行動する。つまり現状維持。
#D:その他
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#B:レジスタンスに幾つか情報を提供する。今まで連絡しなかったが、一先ずレジスタンス側の情報を確認する。
琥珀と同盟を結んでから翌日の正午、俺は私服のワカーナの姿で、都心の裏路地を歩いていた。
タチーハの肉体から離れたのには二つ理由がある。
一つ目はタチーハの知り合いに出会ってしまうリスクがあるからだ。今日はレジスタンスのメンバーの一人に会いに行くのだ。そのためには、政府に顔バレしているタチーハよりも秘密裏に動けるメイドのワカーバの方が都合の良い。
二つ目の理由は、ワカーナが武器なしでも戦えることができるからだ。ワカーナは幼少期に武術を習っており、刃物を持った相手でも、簡単に無力化することができる。
一応、前線にいたタチーハも軍事式格闘技術を使えるが、どちらからというと『霊感』と銃火器で成果を残していた。また、前線を退いたタチーハよりも、ワカーナは主人を守るためにしっかりとトレーニングを続けていたのだ。
この二つの利点があるから、ワカーナに乗り移ったのである。
ちなみに、タチーハの体は『独立』と『霊感』を使った状態で屋敷にいる。今は娘であるフタバの面倒を見ているだろう。
さて、俺の目の前には目的地であるお店の看板が光っていた。
店の名前は『オカマバー パール・チ・ザーン』。店名の由来は大昔の戦争で活躍した革命部隊を文字っているとのことだ。レジスタンスの隠れ家にぴったりな名前だろう。
俺は《レジスタンスメンバーの清彦》と念じながら、準備中の札が掛けられた扉を開けた。
「あら、おかえりなさい。キーちゃん」
「お久しぶりです。マリアさん」
ワカーナの俺を野太い声で出迎えてくれたのは、他人の心を読める能力者にして、海外の政府から捨てられた元女性であった。
c8866a20 No.1431
この世界には、西と東の二つの政府が存在している。
それぞれの宗教やら、文化やら、政治的立ち位置などが相入れず、国境間で戦争をおこなうことがよくある。
しかし、どちらも女性能力者による支配階級社会であるため、レジスタンスの目的は両政府を倒し、支配階級社会を作り替えることである。
俺や琥珀は東の政府の管理する大陸で暮らしている。しかも、戦地からは程遠い場所であるため、西の政府とはほとんど無縁である。レジスタンスの本拠点も東政府の領地内だ。タチーハも東政府の兵として戦っていた。
一方で、マリアさんは元西政府のエリート役人だったらしい。ある時西政府で重大な汚職事件が発覚し、その時に汚職をおこなっていた役員は、全ての責任や罪をマリアさんに押し付けたらしい。
冤罪で捕まってしまったマリアさんは、政府の能力者に性別を男にされた。これにより、マリアさんという女性が持っていた人間関係や地位が全て処分されてしまったのだ。
しかし、独房で孤独になってしまったマリアさんを西のレジスタンスの人々が脱獄させた。その後、マリアさんは東政府へ亡命して、現在はレジスタンスの隠れ蓑であるこのバーの店長をおこなっているのだ。
マリアさんも復讐のためにレジスタンスに所属しているが、俺はもう一人の男性に会いに来たのであった。
その男は
#a)タチーハ略奪の作戦計画を考えたマリアの夫
#b)口が固くみんなに頼られるレジスタンスのリーダー
#c)レジスタンス1の情報通で清彦の親友
#d)その他
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#c)レジスタンス1の情報通で清彦の親友
「待っていたぜ、清彦。略奪能力で異性の肉体を手に入れた気分はどうだ?」
「おいおい、そんな事を言わないでくれ。今回は色々と重要な情報を持ち帰ったんだからさ」
俺が今回此処に訪れた理由はとある情報を手に入れるためだ、その対価として琥珀が手に入れた情報を提示すれば大丈夫と考えていた。
「清彦、この情報は誰から手に入れたんだ?」
「お前は知っていると思うが、琥珀と言うメイドは知っているか?アイツから幾つか情報を得たんだ」
「マジか、確かあいつの能力は『模倣』だったよな。清彦と相性は最悪だと思うんだが」
「その件に関しては大丈夫だ、自己強制証明(セルフギアス・スクロール)を結んでいる。内容は口外出来ないからそこは済まない」
情報通のアイツは"成る程な"と呟いて居ると、懐から一つの紙を取り出して俺に差し出した。
「ほらよ、これが清彦が欲しかった情報だ。アイツの行動範囲と能力の詳細を調べるのに苦労したよ。」
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実はタチーハの身体を盗む前に、ある程度屋敷内の人物の情報を調べていたのだ。ただし、あくまでも名前と能力者かどうかといった情報である。タチーハの『霊感』がなければ、ここを訪れることができるのはもっと先のことであっただろう。
しかし、実行日までに調べきれなかったメイドが二人ほど存在していた。
一人は琥珀である。琥珀は普段からアキラの『未開』を模倣していたらしく、調べきれなかったのはしょうがないと思う。
もう一人は、現在有休消化中の能力者、花子である。
タチーハやワカーナの記憶では、花子は常に明るく振る舞っており、『隠蔽』の能力を持っていることを自慢げに話していた。一般家庭で生まれ育って、休日は姉妹を可愛いがるのが趣味だと語っていた。有休で旅行に行くことも語っていた。
しかし、親友が持ってきた情報は、タチーハの家で働く彼女とはまったく違っていた。
「偶然ってあるもんだよなぁー。その子、翡翠ちゃんの家を何日も行き来していたぞ」
そう、花子は名前や能力、経歴等を詐称して、西東家で働いていたのであった。
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「スパイって所か?」
「そういう事になるな。西と東の二つの政府があるのだから、何方もスパイを送り込んでも可笑しくない。幾つか情報を得たいと考えるだろうし、俺達からすればお互いに争って自滅した方が一番良いんだがな」
話に寄ると、どうやら翡翠は自分の能力が隠蔽だからこそ裏切ってもバレないと考えに陥ったと推測できる。恐らく東の政府はその事実とかは一切認識していない。花子は翡翠と手を組んで、お互いに東の政府情報と西の政府情報を共有しており。自分達さえ生き残れば良いと言う思考をしている事も判明済みだ。
「清彦、翡翠ちゃんと花子ちゃんの能力は何方も隠蔽能力を所有しているだが。清彦が何方の肉体を略奪すれば、お前の存在は絶対にバレないはずだ。」
「成る程な、教えてくれてありがとう。それを考えると俺は翡翠の身体が一番良いかも知れない。琥珀と行動する時は翡翠の肉体が都合が良いからな」
「解った、それならこれを使ってくれ」
そう言うと情報通の親友が懐から二つのカプセルを手渡した。
「これは?」
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「テレパシーカプセルだ、清彦と琥珀にはこのカプセルを飲んで欲しい。これを飲めば心の中で会話とか意思疎通が出来るようになる。俺達のリーダーは清彦に期待しているし、琥珀ちゃんの能力は俺達レジスタンスにとっては必要。何かあれば必要な情報が欲しいのなら遠慮せずに連絡をしてくれ。支援物資は惜しまない」
真剣な表情で語りかける情報通の親友だが、俺は有り難くそのカプセルを受け取った。琥珀とは今後も行動する機会があるのだから、これはとても有り難かった。琥珀から情報を得たことでレジスタンス側に手を貸すと認識して居るが、琥珀は弟さえ無事なら政府がどうなっても良いと思考しているお陰で。俺からすればレジスタンスの立場でも高い評価を受けたのは有り難かったのだから。
「あぁ、ありがとう。期待に応えられるように頑張るさ」
こうして俺はレジスタンスの本拠地から離れる事にした。情報通から様々な情報を手に入れたのだから。
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俺は屋敷に戻る前、私営図書館へ寄り道をした。これに関しては、俺の私的な用事である。
俺は図書館員に頼んで2年前の新聞を受け取る。スポーツやら政治やらが各一面にデカデカと載っているなか、俺はお目当ての記事を見つけた。
記事の見出しは【高級住宅地で親子無理心中】と表現されている。
概要は、母親が幼い長男と一緒に自宅から3キロメートル離れた川に飛び込んだという事件である。その後、海の近くで入水した母親の死体が見つかったものの、子供は行方不明のままであった。幼い子供が長時間水中で生きていけないと判断され、捜索は打ち切りになったとのことだ。専門家や捜索隊の意見は、母親が子育てに病んで無理心中をおこしたと記事で扱われている。
しかし、俺はこの事件の真実を昨日から知っていた。
「確かに憎いよな」
琥珀に対して同情の独り言が漏れる。
これは心中事件ではなく、政府いや、翡翠が起こした暗殺未遂事件である。聞いた話では、翡翠が東政府に情報を密告したらしい。
この事件での、生死不明の長男はアキラであり、死亡した女性は琥珀の母親である。
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琥珀からすればこの情報を得ている可能性があると考えていた。翡翠の事は相当憎いと思う位に復讐をする機会を待っていたかも知れないが、タチーハの存在もある以上は迂闊に行動する事は出来ない。たが、その拮抗が崩れ去っている。何故なら俺がタチーハを略奪しているのだから。
『それで、琥珀。模倣能力を使って。翡翠を略奪するつもりか?』
『私なら、花子の肉体を略奪したいと考えています。翡翠の肉体は貴方に委ねたほうが都合が良いですので。それにしてもテレパシーカプセルと言うレアアイテムを手に入れられたのは僥倖ですね。』
今、俺はワカーナの肉体で琥珀と一緒にメイドとして仕事をしながら情報交換をしていた。テレパシーカプセルを使ったことで念話とか可能になったのはとても大きいし。試しに俺はタチーハの肉体へと移動した上で琥珀との念話が出来るかどうか試してみたが普通に可能だったのも大きい。
『翡翠と花子の2人が集まる時間帯は把握済みですし、タイミングは貴方に任せます』
どうやら琥珀も自分の裏切りバレないようにする為に花子の肉体が欲しかったと言うが、もし乗っ取りが失敗したとしても俺には保険がある。まぁ、特に問題は無いと思うがな。
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『それと例の件についてはありがとうございます』
メイドの仕事が一通り終わった時、琥珀はテレパシーを使ってあの計画のお礼をしてきた。
あの計画とは、タチーハの家に琥珀とアキラを住ませることである。
琥珀とアキラが住んでいる場所は、人里離れたような山の中の廃墟である。タチーハの屋敷からは車で一時間半以上かかるほど距離が離れている。
今はまだ政府の人間に住処とアキラのことはバレていないが、これからも琥珀が往復を続けていけば、何か隠し物があると勘づかれる可能性が大きくなるだろう。最悪の場合、アキラが誘拐されたうえに殺されるだろう。
そういった可能性を少しでも防ぐために、アキラは俺の見える範囲に置いておきたかった。
そこで独立状態のタチーハは、アキラをこの家に住ませるため、いくつかの手回し作業をしている。
俊明への説得に関しては、なんとなくだが目処はある。
それ以外で重要なことは、タチーハと俊明、屋敷で働く者達の人間関係の裏表を洗いざらいにしておくことである。
現在、屋敷には花子というスパイが潜んでいる。花子は略奪を使って対処するとして、他にも他人の息がかかったスパイがいるかもしれない。アキラの情報が今の段階で外に漏れたら、一発でアウトだ。
タチーハの裏切り者がいない状態の屋敷なら、アキラのことしっかり護ることができるし、悪意を持ってアキラに近く者が来てもすぐにわかるのだ。
ただ、タチーハの権限での調べ物は結構時間がかかる。そのため、しばらくはタチーハの体で活動はできないだろう。