f902a52c No.1573
時は現代所は日本。忍者の存在は歴史となりつつも、確かに存在していた。
西に、特殊忍術を扱う男衆、男庭忍軍。
東に、美と手管を扱う女衆、綾女忍軍。
東西二つの忍軍は、時に争い、時に手を組み、現代の闇を駆けている――
* * *
「早くその巻物を見せてよ、清彦ッ」
「急かすなよ太刀葉。今開くんだから」
男庭忍軍の俺と、綾女忍軍の太刀葉は忍務の最中、ある地に封印されていた巻物「帝江洲集界」というものを見つけた。様々な忍術が書かれた巻物で、それを読み解くことで無数の忍術が使えるようになる巻物だ。
本来ならそれは忍軍の頭領に渡し、再封印されるべきものだ。だが俺達は巻物を持って、逃げたのだ。
これがあれば俺達も忍術を使える。その考えだけを持って。
そうだ、俺は何も忍術を使えない、男庭忍軍の落ちこぼれだ。特殊忍術が使えないから技を鍛えたが、それでさえ男庭忍軍の者たちからは「忍術が使えないから忍法を鍛えるとは、女のような奴め」と笑われた。
綾女忍軍のくノ一達からも忍法を習得し、その類では負ける気はしない。だけど、忍術が使えない。男庭忍軍に生まれた者として、それだけが許せなかった。
そして太刀葉だってそうだ。綾女忍軍の物というだけで、忍法は使えるが男庭忍軍のように超絶の忍術を使えない。それが彼女は許せなかったようだ。
俺達は同じ「忍術を欲するもの」として、この巻物「帝江洲集界」を持って逃亡し、忍術を獲得するために動くことにしたのだ。
そして俺達は巻物を人目のない所で開き、「帝江洲集界」に描かれた様々な術を見ていった。
「すごい、すごいよ清彦! これがあれば、わたし達だって忍術を使えるようになるんだねっ!」
「あぁ、そうなれば誰も俺達を見くびらない。みんな俺達を見返すはずだ!」
そこに描かれていた術は多岐に富み、取得できればどんな事もできるのは明白だ。その中で俺達はどんな術を使いたいか、まずは目録に目を通すことにした。
そしてある術の項目を見る。
「融解の術」
その文字を目にした瞬間、俺達の身体は融け始めた。
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* * *
「ちょっ、なに、これ! 清彦何かしたのっ!?」
「何もしてないよ! 身体が、融けて…っ!」
俺達の身体は液体になっていく。二人分の液体が地面に広がっていく。
混ざる、混ざり合う。俺と太刀葉が一つになっていく。
俺が私が男庭が綾女が清彦が太刀葉が、混じり合い一つになっていく中で、俺は強く願った。
このまま終わりたくはない。何も取得できずに死ぬわけにはいかない!
そして、地面に俺達の混ざった液体が広がり、ぼごりと波打った。
身体が再構成されていく。
人の身体になっていく。
忍び装束を纏い、その下の肉体を構成する。
胸は大きく、尻も大きく、だけど腰はくびれて肌は柔らかく。
俺達の身体は一つに混じり合い、一つの姿に構成されていく。
俺は途切れそうになる意識の中で、一つの結論を見つけた。
そういうことか、「融解の術」とは、男女を融かし解き一つにする術なのだ。
ならば俺は意識を強く保った。男庭忍軍の者として、超常の術を知る一日の長を以て、太刀葉より先にこの肉体の主導権を取ることを目的とした。
液体から、肉体が持ち上がる。
太刀葉のような、いやそれより豊満な女の肉体。だけど俺のような白銀の、しかし腰以上にまで届く長い髪。
俺達の肉体は一つになったのだ。
「はぁ…っ! これが、『融解の術』の成果…! 俺は…、清彦だ…!
いや、太刀葉と混ざってこの姿になったのなら、これからは『清葉』とでも名乗るか…?」
俺は地面に落ちていた「帝江洲集界」を手にし、ほくそ笑む。
この姿なら、男庭忍軍も綾女忍軍も、俺達が逃げたとは思わないだろう。
そうだ、俺は自由になったのだ。
清彦でもない、太刀葉でもない俺は、鍛え上げた忍法と「帝江洲集界」の忍術で、好きに生きる事ができるのだ。
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#この作品における定義
>忍法と忍術
『忍法』
いわば技術の総称。素質と経験があればだれでも使える技(スキル)である
綾女忍軍の領分であり、特殊忍術を使えないくノ一らは、自らの美貌と技を磨いてきた。
綾女忍軍は忍法を用いる事で情報を集め、「集団の力」を鍛え上げてきた。
『忍術』
いわば特殊能力の総称。他人が如何様にしても真似できない芸であり術(アーツ)である。
男庭忍軍の領分であり、相手に夢でも見せているような忍術を用いて不可能を可能にしてきた。
男庭忍軍は忍術を用いる事で様々な事を行い、「個の力」を重視してきた。
>「帝江洲集界」
様々な忍法が描かれている巻物。読んだ者にその忍術を習得させることが可能。
言ってしまえば様々なTS方法が忍術としてしたためられている。
憑依、変身、入れ替わり、皮モノ、融合、脳移植、転生、現実改変などなど、様々な術が「帝江洲集界」には描かれている。
清彦と太刀葉の融合体「清葉」が所持し、その全てを使える。
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清葉となった俺はこれから、
#a)西の里に行き、男庭忍者で清彦であった時の親友、俊明を誘惑をしてみる。
#b)東の里に行き、綾女忍者で太刀葉の妹、若葉と一緒に「帝江洲集界」に載っている忍術を試してみる。
#c)都会に行って、お金持ちへの成り上がりを目指しみる。
#d)清彦と太刀葉の融合を見ていた謎の人物から、「帝江洲集界」と同列の巻物を収集することを依頼される。
#e)その他
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#a)西の里に行き、男庭忍者で清彦であった時の親友、俊明を誘惑をしてみる。
このまま西の、男庭忍軍の所に忍び込もう。そして親友である俊明に声をかけるのだ。
アイツの使う忍術は『遠見の術』。どれほど遠くても目標を見る事ができる術だ。監視や追跡は得意だが、逆に言えばそれしかできない。昨今「見れる」というだけでは「証拠」という面で怪しく、すべては俊明の証言頼りになる。
どちらかと言えば俺と同じで冷や飯食いの類で、もっと特殊な術があれば、とボヤいていた。
「帝江洲集界」の忍術を見せれば、俊明も新しい術が使えるようになる。
いや、その前に少し、この体で楽しませてやるのもいいな。
そんな事を考えながら、俺は男庭忍軍の里へと駆けだした。