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魔法使いとして魔法を極めに極めまくった俺だが、体は一向に強くならず、魔物に襲われて死んでしまった。
こういう時のために身につけた魔法が「転生の秘法」だった。死んだ人間の魂は冥界に送られるが、死の瞬間に肉体から魂のみを分離させることで、なんとか現世に留まることができるという魔法だ。
だがそれだけではただ肉体を失っただけの魂にすぎない。今まで培ってきた魔力全ては魂に宿るため残っているが、なるべく早く代わりとなる肉体を手に入れる必要があった。
秘法で転生先になった相手の魂は俺に吸収され、記憶・知識・技術・能力、その他相手の持つ全てを俺が継承することができる。体を動かすセンスが天才的になかった俺でも、一流の戦士の能力を丸ごと活かすことができる訳だ。
俺が一生懸けて学び蓄えた魔力と知識に強靭な肉体が合わされば、今度こそ最高の冒険者になれるはず。
そうして俺は、戦士系職業の冒険者が集う酒場を漂っていた。
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ここまで来るのに魂で居られる制限時間はもう寸前まで迫っている。相手は慎重に選びたいが、そうは言ってられないかもしれない。客がいない、なんて最悪の場合はマスターやウェイターの中に入るしかないかもしれないと思っていたが、俺は運が良いようだ。
この辺りどころか、国中でも一二を争うくらい有名な女戦士4人のパーティが呑んでいたのだ。
1人1人がその辺のパーティ程度なら圧倒できるほど高い能力を持ちながら、息のあった連携で魔王軍の幹部すら討伐した実績のあるチーム。戦士だけで組んでいるのは彼女らに着いていけるほどの魔法使いが居ないから、とのことらしく、軽い回復魔法や補助魔法は使っているようだ。俺がこの中の誰か1人に転生して、魔法を使い始めてもそこまで問題にはならないだろう。
他にまともな候補もいない。女にはなってしまうが、この際些細なことだ。俺は再び4人の周りを飛び回る。今から乗り移る相手がこれからは自分の顔になり、自分の身体になる訳だ。時間はないが大事な人生の選択、しっかりと吟味はしたいと思った。
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「ちょっとヒヤっとしたこともあったけど、アタシらなら余裕だったな!」
手前左で豪快にジョッキを煽るのがフタバ。
国内どころか大陸でも有数の怪力で知られており、その力でゴーレムすら両断したという噂まである。
さらに打たれ強いらしく、パーティ内でも最前線で魔物の注意を引きつける役を買って出ることが多いようだ。
俺がこの女に転生すれば、俺の魔法技術を使ってあの強靭な肉体にありとあらゆるバフをかけることで、今までよりもさらに数段強力な戦士へと昇華するだろう。
あと乳がでかい。
「全く……なんとかなったからいいものの、4人でドラゴン討伐なんてこれっきりにして下さいね……!」
手前右で冷静に嗜めるのがワカバ。
血の気の多い戦士で構成されたパーティの中ではストッパーの役割をすることが多いが、その観察眼の鋭さは確かなもので、戦士としての高い攻撃能力と相まって魔物を一撃で葬る会心の一撃を得意としている。
俺がこの女に転生すれば、攻撃の選択肢に魔法を加えることができ、更に効率よく魔物の弱点をつくことが可能になるだろう。
あと乳がでかい。
「まぁまぁそう言わないでよ!ワカバの作戦立案のお陰で全員無傷で済んだんだし!」
右奥でそんなワカバを労うのがミツバ。
パーティのムードメーカー的存在であり、その速さは折り紙つきだ。風のような速さで懐に潜り込み、一撃入れられたと感じる頃には射程の外へと逃げ延びている。魔物にとっては厄介この上ない存在だ。
俺がこの女に転生すれば、あの速度をバフして更に速く動くこともできるし、懐で毒や炎など持続的にダメージを与える一撃をお見舞いすることだってできるようになるだろう。
あと乳がでかい。
「ふふ、そーね。今日はパッとお祝いしましょ!」
左奥で楽しそうにしているのがタチハ。
天才肌で、武闘家、盗賊、魔法使い、僧侶のあらゆる技能を短い期間で身につけており、それらの特技を合わせて使いこなすことができるらしく、戦士だけのパーティでは特に不可欠な存在のようだ。
俺がこの女に転生すれば、彼女の持つ天性のセンスも俺のものになる。これを利用して生前の俺の才能では至れなかった魔法の深淵を覗くことも出来るかもしれない。
あと乳がでかい。
再び4人を見据える。誰を転生先に選ぼうとも、俺の中でこのパーティの女戦士の誰かへと生まれ変わることはもはや確定事項になっていた。
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#誰に転生する?
#1.フタバ
#2.ワカバ
#3.ミツバ
#4.タチハ