/futaba/ - ふたば板κ

初の全感覚没入VRゲームの限定テストで、オレは迷わず女性キャラを選んでスタートした。視界に広がる新世界に
「しまった！これじゃ自キャラが見えん、愛でられないじゃん」
と甘美な響きのボイスに困惑しつつ見下ろせば
「胸は小振りかな、そしてこっちは無いと確認してみたものの。感触雑じゃね？絶対本モノと違うよ、何が全感覚だよ期待はずれだよ。再現する解像度が低すぎる！」
気を取り直してゲームを進めるがこっちもバグだらけだ、特に意識で動かすキャラ動作のラグがひどい。それでもチュートリアルが終わる頃には不満なく動かせるようになった。可憐さを意識するのがコツのようだ、喋り方も女キャラを意識したほうが技のキレもいい
ゲームを進めると魔物討伐の任務があり丁度PT募集していたので仲間に入れてもらった
5人の女性キャラPTだが中身は全員男で悩みも一緒だった
「自キャラが見えん、愛でられない」
その反動か他キャラを熱心に見つめあいスキンシップの距離感が近い気がする
生成された女性キャラはどの娘も眩しいほど魅惑的なので悪い気はしない。むしろ心地良い
「キヨヒコはジョブチェンジしないの？今ならタダで専用装備がもらえるよ」
「オレ、私はまだ何にするか決めてなくて、どうしよう」

見回してPTに足りない要素を加えることにした
「ジョブチェンジですね。ではこちらへどうぞ」
専用の洗礼を受ると装備を渡される
「あゝ自動じゃなく着替えるんだ、自分で。変なところでアナログだな、けどシスターコスかぁ」
そこで初めて姿見に写る自身を見た
「可愛い…どおりで視線が低いわけだ」
可憐なその少女のイメージが定着すると感覚が一段と鋭くなった気がした
聖なるドレスを身に纏うと肌に触れるシルクの精細さを実感した
ラグなく動き初める体は軽く敏感になって
「うおっヤバいくらいスースーする。ノーパンだからか？ノーパンでいいのか？でも他にないしな、店で売ってたら買おう…パンツ」
「お待たせしました。では行きましょう」

互いに可愛いを連呼し合う5人PTは道中戦闘やスキル連携を訓練しながら魔物の潜む廃坑へ踏み込んだ
だがその時システ厶アラートが鳴る
──緊急メンテナンスを行います。ログアウトしてください──

「ええぇ、これからってときに」
「しゃーない、また今度ですね」
「ログアウトって、ああこれか、これフィールドじゃないとできないみたい。じゃあ一旦戻ろうか」
引き返す途中で真っ暗になった
軽かった身体は重苦しくなり野太い声で
「強制ログアウトかこれ、はああクソゲー」
メンテナンス終了時間は未定のまま数日が立ちクソゲーはそのまま再開されることなく開発終了となった
オレはあの新感覚が忘れられずに再開を期待したが叶わなかった
１年後。似たようなシステムの別ゲームが期間限定で始まった
「全然違うじゃん」
女性キャラが選べなかった。ゲーム内は前回と変わらないが、キャラはよりリアルが反映されていた
似たような風景に以前を思い出しゲームを進めるが敵が強く多くなった気がした
「変なバランス調整がクソゲーの所以か」
キャラを動かすことに慣れていたから”普通”よりも先にいるPTに入れてもらえた
他のPTと共に魔物の巣を攻略することになった。以前のクソゲーを思い出して聞いてみたが誰も知らなかった
だが巣につくと既視感があった。廃墟の奥に続く廃坑と
敵は以前よりも多く油断せず奥へ進むと、異様な空気と悲鳴と荒い息にあえぎ声が交じる広間に出た
「吸うな媚薬だ、いま魔法で空間を浄化する」
女キャラが鎖で繋がれ魔物と交尾していた。交尾していない女性キャラは腹が膨れていた
「NPC！？どういうシナリオだクッソ」
行為に夢中な魔物を処分していく、気づいて逃げようとする魔物もいたが膣内にアレが引っ掛かり抜けずに首を跳ねらてていく
魔物の生殖器や産卵管は女性の中で膨らみ抜けないようになっていた
空間が浄化され媚薬の効果が切れると正気に戻り泣き出す者が増えた
女NPC？の救助へ方針変更になったとき
──緊急メンテナンスを行います。ログアウトしてください──

「なんだってこんなときに」
「ここではログアウトできません撤退しましょう「全員は無理だが連れていけるなら助けるぞ」
「リーダー無理です鎖が外せません」
「止む終えん全員撤収」
「胸糞ッ運営に文句を言ってやる！」
と口々叫ぶPTメンバーをよそに、オレは腹が大きく膨れた一人の少女に近づいていく
鎖に繋がれ生気を失った顔を覗きこむ
姿見を見て以来一目惚れした少女が変わり果てた姿で佇んでいる
「今助ける」
──緊急メンテナンスを行います。ログアウトしてください──
アラートが鳴り響く中、目の前が真っ暗になる
軽い身体の一部にずしりと重りがのり圧迫感が膨れ上がり軽い吐き気がこみ上げる
「また強制ログアウトかこれ、はああクソゲー」
と甘美な響きのボイスに困惑しつつ見下ろせば
鎖に繋がれ胸以上に膨れ上がる不快なボテ腹が嫌でも目に飛び込んでくる
望んでいた1年ぶりの新感覚は望まない方向で超越していた