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俺は勇者だ。人類の運命と期待を背負った長く苦しい旅のすえ、仲間達の犠牲のうえにようやく魔王との決戦を迎えた。だが敗北した。
「くっ…殺せ!」
この敗北で人類の期待を裏切り、仲間の犠牲を無駄にしてしまった。死んで詫びるしかない…いや、そんな責任に苛まれてそれだけで気が狂いそうだ。早く…この苦しみから俺を解放してくれ!そのために殺してくれ!
そして魔王の放つ最大の魔法が、もうレジストする力すら残っていない俺を襲う。
魔王の力でその様子は全世界の人類が見せつけられている。最後の最後まで、俺の心を責任の重さで磨り潰す気か。
だが…それもこれで最後だ。
魔力の嵐に巻き込まれた瞬間、俺はこの苦しみから解放される最期の幸福を感じていた。
だが…
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「死んで…ない?」
いや、体がおかしい。ジワジワと苦しめながら殺すつもりか?
それにしては苦しくもない。耳がうずうずして…バサっ…と背中に何か広がる気配を、無いはずの、そう、翼を感じる。
体の形がかわっていく!?キュウ…と腰が縊れるのを感じ、尻が丸くやわらかくなっていくのを感じる。
胸が…
「おっぱい!?」
そう、それは旅の途中で立ち寄った街で、仲間達とパフパフしたおっぱいだ。それが自分についていた。
「これって…メスの魔族!?」
なんていうことだ。これから俺はメス魔族として魔王に犯される姿を全世界に晒すのだ。
「や、やめてくれぇ!いっそ殺してくれ、勇者としての責任を果たせないばかりか、こんな屈辱…!」
だが魔王はニヤリと…いや、優しく微笑んだ。
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「勇者は、もう殺した。人間どもは貴様が魔力の渦に飲まれ消えていくのを目の当たりにしただろう。奴らが見たのはそこまでだ」
「え…」
メスの魔族にされたのに変わりはない。だが、今の姿を、これから起きることを人類や仲間に見られない、そう言われただけで心が軽くなってしまうのを感じる。
「それに魔族の女、しかも愛玩種族になど、世界を救うことなど誰も求めはしない」
そう言う魔王に俺は抱き寄せられ、胸の谷間をやさしくなであげられた。
「ぁ…♪だ、だめだ、俺、勇者なのに、こんな…」
「おや、抵抗するのか?勇者として。今度はそんな体で、また無責任な一般民衆の期待にたった一人で応えるというのか?」
魔王は俺を突き放すと、戦いの構えをとる。
お、俺、つまらない意地はったがために、愛玩魔族として魔王に叩き潰されるのか!?
後悔と恐怖が襲いかかる。そんなもの、勇者としては当然だと思っていた。でも一度すべてが終った感じていた今、それはあまりに理不尽に感じた。
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「無理であろう?もともと無理だった、だがもういいのだ。いや、もう仕方ないのだ。難しいことも怖いこともこの魔王にまかせ、貴様はただ可愛がられていればいいのだ」
やさしく撫でられ、いや、その負担を任せる側だと言われてホっとしてしまう自分がいた。
だめだ、魔王のまやかしだ。でも…どうせ死にたいとすら思ったんだからいいんじゃないか?
い、いや、違う…
「だけど仲間達を犠牲にして、俺だけ解放されるわけにはいかない…!」
言ってしまって気が付いた。そうか、俺は愛玩魔族にされて解放されたんだ。あらゆる重圧から。
「仲間か、貴様をここに送り届けるために死地に残った奴らがどうなったか、記録を見せてやろう」
驚いた。力尽きた戦士も、魔法使いも…俺と同じようにメスの愛玩魔族にされていたからだ。
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「さぁ、生きて会えるのだ、喜ぶがいい」
魔王が手をかざすと、一方の壁が透き通って消えた。
「ぁ…ぁ、ああ♪あんなに手ごわくて怖かったのに…ぁあ、今は気持ちいい…すごい、ぁ♪」
「戦うより…こっちのほうがいいよぉ…♪もっと…もっとぉ♪」
かつての仲間達は、手ごわかった魔物達のチンポや触手に嬉しそうに腰をふっていった。
そこには魔物と対峙した時の緊張感も…恐怖や焦りもなかった。
「さ、もう仲間達は"解放"されたのだ。もう貴様は充分戦った。休んでよい」
「ぁ…ああ♪ほんとに、ほんとにもう、何もしなくても、考えなくてもいいのか?」
言ってしまった、確認せずにはいられなかった。
「そうだとも、全部この魔王にまかせて、貴様は気楽にしていればいいのだ」
メスの魔物にされた。魔王に抱かれる。だというのに…
甘えておけば全部まかせておける。それは今までの苦しみにくらべれば、あまりに甘美だった。
「ぁ…ぁああ♪…」
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「ね、魔王様。この衣装、どうです?」
「楽しんでいるようで何よりだ。あれだけ抗っていたとは思えないな」
「いやですよ、前の"俺"のことなんか思い出させないでください。わたしは魔王様に可愛がっていただけるだけで幸せなのですから」
「ところで人類だが…」
恐怖がよみがえる。聞いてしまったら、また何か責任を感じて苦しくなってしまわないか。
だから、言いかける魔王の唇をキスでふさぐ。
「そんなこといいから、いっぱい可愛がってください♪」
もうそんな話を聞いても関心すらなくなるくらい、何もかも忘れるまで、いっぱい、いっぱい可愛がってもらわなくちゃ。
せっかく解放されて手に入れた、このほんとうの幸せ。もう手放したくないから。