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「ああっ、身体が熱いっ!」
身体中から汗が吹き出し、敏明は耐えきれずに着ていた服を脱ぎだした。
しゅうしゅうと蒸気の煙に包まれた彼の体は熱で溶けるバターのようにみるみる形を変え、一回り小さく縮んだように見える。
煙の中で苦悶の声をあげ、ふらふらとよろめくその姿は少年のかたちから幼い少女の様相へと変わりつつある。
髪は背を這うように長くぞろりと伸び、元の色素を失いながら輝く金髪へと変わった。
「ああ……、うくぅ……」
女の身体を得てなにかを感じているのか、その頃になると彼の声に妙な甘さが滲み始め、頬にもわずかだが赤みがかかっている。
性別が変わってしまった以外で特筆すべきなのは耳の形状だろう。
彼の耳は尖るように横に伸び、その形状はファンタジーなどによく見られるエルフや悪魔を起想させるものだった。
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実際にこの少年は今、リリアンという女悪魔との契約によりその眷属になろうとしていた。
少年のすぐ傍らに浮き上がる女悪魔は不気味な笑みを口元にたたえ微かに聞こえる程度の声音で謎めいた詠唱を続けている。
敏明の敏明の足元には赤色の光を放つ魔法陣が描かれ、そこに召喚された無数の黒蛇たちが彼に向って鎌首をもたげている。
黒蛇には口も目も存在せずその姿は長尺のおたまじゃくしを連想させた。
蛇たちは敏明の白い素足に巻き付くようにしてその身体を登りだした。
敏明はおぞましさに悲鳴をあげ蛇を払おうと躍起になったが、蛇は触れた瞬間に黒い煙となり霧散し、またすぐに元のよう戻るだけだった。
蛇はその白肌を覆うようにして身体にぎりぎりと巻き付きはじめた。
「ううっ」
敏明は蛇の肌触りの不快感に顔を歪め呻く。
やがてとりついた蛇たちはそのかたちをタール状に溶かし始めた。
薄く広がり肌に張り付いていく。
素足に取り付いた蛇は美しいロングブーツへと姿を変えた。
それは太ももまである黒光りするロングブーツで、ヒールの高さは敏明に極端なつま先立ち姿勢を強いるものだった。
彼はその慣れない姿勢に大きく上体を泳がせたが、まるでブーツが床に張り付いたように彼が倒れることはない。
一方、腕に巻き付いた蛇は漆黒のロンググローブを形作った。
シルクともラバーともいえぬその艶めかしい素材は敏明の指の先端から二の腕までに艶めかしい光沢と引き締まったフォルムを与える。
ロンググローブを纏った腕や指先はひらひらと舞うように動きを見せ、するとふらついていた彼の身体は何事もなかったように静止した。
そのどこか芝居がかった振舞いや立ち姿勢は女らしさを感じさせるものだったが、どこかに糸で手繰られたようなぎこちなさも漂っている。
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蛇は少女の最も敏感だろう部位にもとりついていた。
二匹の蛇は尾を絡ませながら彼の背中から胸を繋ぐように巻き、前面にくると頭部を胸の先にねじ込むようにぐりぐりと押し当てた。
「ああっ、そこはっ」
敏明は身体をビクリを反応させ声をあげる。
その瞬間蛇の体は先の蛇たち同様に溶け、ゆっくりと胸の先端を覆うビキニブラへと変わった。
残る二匹の蛇は脚の付け根と股間を交差させるように巻き付き、また同じようにビキニパンツへと変わった。
彼に与えられた黒衣は少女の柔肌に吸い付きながら身に着けている者だけがわかるようにわずかに脈動していた。
敏明はその感覚に頬を染め耐えるように身をよじる。
その魔術の装いは無垢な少女の肉体にさらなる変化を促している。
「ふあっ?!うあああっ、ああっ!!」
敏感な部分を甘く吸われ、時に噛まれるような感覚に敏明は悶絶し、全身を仰け反らせてビクッビクゥッと身体を痙攣させた。
その見開かれた大きな瞳からは涙が、唇の端からは涎が糸をひく。
少女の華奢でやや骨ばった体はその性的の儀式の効果か、少しずつだが目に見える速度で大人びた変化を得ていく。
「うあ、あああ!?」
弾力を感じさせるその女らしい肉付きは特に臀部や胸部を中心に顕著さを見せ、いつの間にか敏明は年頃の少女らしい肉体を獲得していた。
胸は膨らみを形成し小ぶりだが張りを感じさる。
お尻の肉付はその細い腰に見合わぬほど多く、それは優美な曲線を描き太ももへとつながり、ブーツに押し込められた太ももがとても窮屈そうに見える。
この魔術で作られた装いは着用者に見合う姿を強いるようだ。
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「はぁ、はぁぁっ、はあああっ」
敏明は肩で息をしながら拷問のようなこの変身の儀式もこれでやっと終わりかと女悪魔を見つめた。
だが女悪魔の詠唱はまだ終わっていない。
床に残った蛇たちはひとかたまりに集まり束ねられとりわけ大きな蛇となった。
蛇は鎌首を上げた直後に飛び上がると驚いて半開きになった彼の口に一直線に飛び込んだ。
「ぐぅぁ!」
口の中に飛び込んだ蛇はのたうちながら瞬く間に身体の内部へと入り込んでしまった。
すぐに吐き出そうとしたがもう手遅れだった。
敏明の全身に黒色の魔術的紋様が浮き上がり、それは消えては紋様を変え現れるを繰り返す。
「ああああぁっ!!」
敏明は己の身体の中に潜り込もうとする蛇に半狂乱となったがどうすることも出来ない。
蛇が這い進むたびに中からなにか邪なもので侵されていく感覚がある。
蛇は消化器官を通り下へ下へと突き進んでいく。
「あひっ!」
お腹を通過した蛇はとうとう肛門に到達し頭を内側の壁に突き当てた。
外へ出ようとするが頭がつかえて出れないのか、押し広げようとゴリゴリと頭を突き当てる。
敏明は全身の力が抜けていくのを感じた。
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だがロングブーツは彼が倒れることを許さない。
直立した姿勢のまま彼は身体をビクビクと勝手に痙攣し、彼は涙を流しながらだらしなく舌を垂らした。
その開いた口からは小さな牙が覗いている。
敏明の顔には黒いアイメイクと黒いリップが薄くひかれ、その瞳は暗い深紅へと染まっていく。
その変化は幼く見えた彼女の表情にどこか邪悪で妖艶な印象を与えた。
「ああ゛ああ゛あ゛」
メリッ、メリ、メリィと音をさせ彼の頭部からは黒色の角が姿を現した。
角はねじれながら弧を描くようにして下方向内側に曲がって止まった。
頭のつかえていた蛇もそれに合わせて肛門を通過するのに成功する。
「あ゛あ゛っ、あああああんっ」
敏明は歓喜ともつかない声をあげ身体を大きく弓なりに反った。
ビキニショーツの後部中心から蛇の頭が勢いよく飛び出す。
頭を矢じり状に変化させたそれは悪魔の尻尾そのものだった。